作業療法士としていろいろなところで仕事をしてきましたが、病院で働いていた時には、年末年始に救急車で病院に運ばれる人に会うことも珍しくなかったです。
例えば、
お酒の飲み過ぎ
いつもはしない運動を急にはじめて胸が苦しくなって倒れてしまう(心臓発作など)
初詣などの人混みでケガをする
雪などで足を滑らせて骨折する
お餅を喉に詰まらせる
といった症状で病院に運ばれてくることもあれば、お正月を過ぎてから
体が重たく感じて仕事や学校に行くのがつらい
いつも以上に眠たく感じる(睡眠不足)
急に体重が増えて体の調子が悪い
といった症状で、いつもの生活リズムが崩れてしまったと話す人も少なくありません。
救急車で運ばれることに関しては、気をつけていれば大丈夫かもしれないけれど、問題なのは
お正月を過ぎてからも体の疲れが取れていない(むしろ疲れが溜まっている)ことです。
お正月が終わってもお正月前より疲れたのでは、何のためのお休みかわからないですよね。
私は年末年始を過ごす時に、必ず患者さんや利用者さんに
「できるだけ普段通りの生活をして、生活のリズムをきちんと守ってください」
とお伝えしていますし、自分自身の生活でも心がけています。
理由は簡単で、
一度生活リズムが崩れてしまうと、元に戻すために時間とエネルギーが必要だからです。
そこで、年末年始をゆっくり過ごしたいと考えている人へ、お正月が明けても健康でいられるための注意点をお伝えします。
目次
普段通りの生活リズムを心がける
1.急に気合を入れて掃除をしない
年末に掃除ができなかったからといってお正月から気合を入れて掃除をする人がいます。
時間はたくさんあるように感じるけど、お正月が明けたら片付けをする時間がないと感じるから、あわてて家の掃除を始めたくなるようです。
掃除を始めると、あちこちが気になり始めて、気がつけば家の中全部の片づけや模様替えをしてしまって体を痛めてしまうことも珍しくないです。
ではどうすればいいのか、簡単なことです。
今から少しずつ片付けをしておく
お正月に掃除を全部しようとせずに1つの場所や1つの部屋から少しずつ片付ける
家族と一緒なら、みんなで一緒に片付けをする
これだけで、体を痛めずに掃除をすることができます。
とにかく、少しずつ片付けることがポイントです。
2.急に運動を始めない
「いつも運動不足だから、お正月から気持ちを新しくして今年はしっかり運動するぞ!」
気持ちはわかります。
でも、体は急な運動に耐えられません。
むしろ急な運動は心臓へ強い負担をかけてしまいますし、しかもお正月は『冬』の真っ最中ですから、ただでさえ心臓に負担がかかりやすい時期に急な運動を始めてしまうと、それだけで心臓発作などを引き起こしてしまいます。
「心臓発作はお年寄りとか、タバコを普段から吸う人だけに関係することでしょ」
という人もいますが、実はあまり関係ありません。
俳優の滝口幸広さんが34歳の若さで『虚血性心不全(きょけつせいしんふぜん)』で亡くなられたことは皆さんの記憶にも新しいことだと思います。
難しい名前の病気ですが、要するに心臓を動かす大事な血管が何らかの理由で狭くなって、血液が十分に通らない状態(虚血)が続いて、最終的に心臓が止まってしまうことを言います。
タバコやお酒を普段からとっている人は特にこの病気になりやすいと言われていますが、それ以外に「体に急なストレスがかかる」ことも原因ですし、「精神的なストレス」もこの病気になる原因です。
私が病院で働いていた時には、年齢に関係なく冬の寒い時期にこの病気で救急車で運ばれる人も珍しくありませんでした。
では、運動を始めたいのであればどうすれば良いのでしょうか。
軽めのストレッチからはじめて少しずつ体を温めていきましょう。
体が温まったら、散歩などの軽めの運動から始めましょう。
散歩の目安は1日6000歩から7000歩ですが、普段歩き慣れていない人は、普段の「歩数+1000歩」くらいできれば十分と思ってください。
ちなみに、厚生労働省は1日あたりの効果的な歩数を約8000歩としており、目標は10000歩と計算しています(リンク:厚生労働省 身体活動・運動)が、これはあくまでも目安であって、普段からそもそも歩いていな人にとっては8000歩ですら体の負担になります。
最近ではスマホなどに自分の歩数をカウントしてくれる機能もついていますから、まずは自分の普段の歩数を確認してそれよりもちょっと歩くくらいのペースを守りましょう。
そうして基本的な『体力』をつけてからより積極的な運動を始めるといいと思います。
3.朝食・昼食・夕食はできるだけいつもと同じ時間に食べるようにする
食事は体の大切なエネルギー源です。
人の体は普段と同じリズムでお腹が空くようにできています。
ところが、年末年始だからといって、いつもと違う時間に食事をすると、しっかりと消化されないまま過ごすことになってしまい、体の中で食べたものが消化されないと、便秘などの症状を引き起こしてしまう原因になります。
便秘が続くと体の中に毒素がたまってしまい、いろいろな病気を引き起こす原因にもなります。
「時間があるからいつでも食べられる」
ではなく
「時間があるからいつも通りきちんと食べる」
ことを変えないようにしてください。
寝て起きる時間は普段とできるだけ同じにしておく
普段通りの生活リズムを心がけるにも関係してきますが、年末年始は特に睡眠不足になりやすいです。
特に、カウンドダウンのテレビをみたり、夜通しテレビをみたり、夜遅くに初詣に出かけるなど、夜更かしや朝寝のクセがついたりと、年末年始は1年の中で最も睡眠のリズムも狂いやすい時期とされています。
1.睡眠不足は病気のもと
睡眠が不足すると脳に大きな負担がかかってしまいます。
録画した映画やドラマを長い時間見る、テレビ番組を連続して長い時間見続けると、まばたきをする回数が減って目が乾くこと(ドライアイ)や目の疲れが取れずに視力が落ちることもあります。
また、映像を見続けると脳への刺激が大きすぎてしまい、常に脳が興奮している状態になってしまい、その結果、眠れなくなったり眠りが浅くなったりしてします。
1時間おきに遠くを見る(できれば1km以上離れた山とか目印になるもの)
目を閉じてリラックスした姿勢で過ごす
『蒸気のアイマスク』
などを利用して、目にも脳にも優しくしてあげてください。
ちなみに、私はドライアイの傾向にあるのと、パソコンでの仕事も多いので、『蒸気のアイマスク』はよく使っています。
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2.『まとめて寝る(寝溜め)』ことは体に良くない
十分な睡眠が取れていないと、脳の中の生体時計が崩れてしまいます。
また、睡眠が十分に取れていないからといって
「今のうちにしっかり寝ておこう(睡眠貯金をとる)」
と思っている人もいますが、残念ながら『まとめて寝る(寝溜め)』ことで睡眠不足が解消されたり、睡眠貯金が溜まったりすることはありません。
日頃の睡眠不足は自分に合った正しい睡眠時間で解消されるのです。
睡眠は、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」を90分ずつ繰り返していて、「レム睡眠」の時に起きるとすっきりと目が覚めます。
睡眠時間は人それぞれですが、90分の倍数となる睡眠時間が理想とされているそうです
(例えば90分×4=360分=6時間、90分×5=450分=7.5時間)
自分に合った睡眠時間を取るためには、毎日決まった時間に眠りに入ることが理想なんですよ。
3.長く寝ても疲れは取れない
「じゃあ、いつもよりも少し長めに寝れば少しでも疲れが取れるかも」
と思っている人もいると思いますが、これもむしろ体も頭も疲れてしまいます。
実は寝ることも結構エネルギーを消耗するのです。
例えば、20歳の女性で体重が45kgの人が10時間ほど睡眠をとった時の計算式は
「45(kg)×0.017(kcal)×600(分)×0.95(補正値)=446(kcal)
です。
これはお茶碗1杯のご飯がだいたい220kcalなので、お茶碗2杯分のカロリーを単純に消費していることになります。
寝ている時間が長くなれば長くなるほど、エネルギーを消費するので、疲れが出るのは当然のと言えますね。
やはり長く寝ることよりも、起きていつも通りの活動をして、しっかりご飯を食べて栄養をとることが大切ですね。
食べ過ぎ飲み過ぎは病気のもとになる
年末には年越し蕎麦を食べますし、お正月は、お雑煮やおせち料理だけではなく、みんなで集まってお酒を飲んだり、友達の家に行った時についつい気持ちが良くなって、あれこれと食べてしまったり飲んでしまったりすると思います。
特に、『お餅』はおいしくて予想以上にたくさん食べてしまう傾向にあると思います。
ちなみにお餅を食べる目安はだいたい2個くらいが理想とされています(出典:京都の米屋・独断と偏見のお米Q&A)。
「年末年始くらいはしっかり美味しいものをお腹いっぱいに食べたい!」
という気持ちもわかります。
これが、軽い運動をしながらの食事であれば問題ないのですが、だいたい運動はしないで食事ばかり食べているのではないでしょうか。
冬場の時期は栄養を貯めないといけないので、いつもよりも脂肪がつきやすく、また。いつもと違う味付けの食事を食べることが多いので、食欲が一気に増えることも珍しくないです。
でも、そんな時こそ、お腹がいっぱいになるちょっと手前の『腹八分目』を目安に食事をするように心がけてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
年末年始を健康に過ごすためのいくつかのポイントをお伝えしました。
でも、「あれもダメ、これもダメ」と私は言っているのではないんです。
要するに
普段通りの生活をなるべく続けること
「やり過ぎがよくない」
と言いたいだけです。
それさえ守れば、年末年始をゆっくりのんびりと楽しく過ごすことができ、お正月明けの学校や仕事や家の用事などに体の疲れもなく気分良く行動できると思います。
年末年始に限らず、何事も、ほどほどですよ。
最後までブログを読んでくださり、ありがとうございます!
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