こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
今日は、高野山真言宗 僧侶の川本祐道(ゆうどう)として、仏教に関するちょっとした小話(こばなし)をします。
サクッと読めるように心がけていますので、お気軽に読んでみてください。
(*´▽`)ノノ
今日のアイキャッチの画像は、京都の醍醐寺(だいごじ)の弁天堂の写真です。
(*^-^*)
『弘法筆を選ばず』の本当の意味
お大師さまは、平安時代を代表する
筆(書)の名人
として有名です。
平安時代
弘法大師(お大師さま)
嵯峨天皇
橘逸勢(たちばなのはやなり:西暦782年?〜842年)
の3人は
『三筆(さんぴつ・さんひつ)』
として知られています。
お大師さまの筆(書)に関しては、お大師さまが乗った遣唐使船が漂流した時に、その地方を管理する州の長官宛てに書いた文章で遣唐使一行を救った話を以前のブログに書いていますので、そちらも参考にしてみてください。
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お大師さまが筆(書)の名人として知られていたのは日本だけではなく、お大師さまの留学先であった中国の唐(とう)で
五筆和尚(ごひつわじょう)
として筆の名人の称号で呼ばれていたことは、お大師さまの50年後に唐に渡った円珍(えんちん:西暦814年〜891年 天台宗寺門派の開祖)によって伝えられています。
五筆とは書に関する5つの書き方のことを言い
篆(てん)・隷(れい)・楷(かい)・行(ぎょう)・草(そう)
を表します。
五筆和尚に関しては、お大師さまが5つの筆を手足と口に持って一挙に5つの書を書いたことからきているという話がありますが、どうやらこれは後の世の作り話であったとする説のようです。
実際には先ほどの五つの書き方を含めた
あらゆる筆法を自由自在に使いこなした
ことを褒め称えてつけられたという話の方が現在では有力な説となっています。
そんなお大師さまに関係したことで
弘法筆を選ばず(こうぼうふでをえらばず)
という言葉があります。
一般的に知られている意味は
能書家の弘法大師はどんな筆であっても立派に書くことから、その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料のことをとやかく言わず、見事に使いこなすということ。
下手な者が道具や材料のせいにするのを戒めた言葉。<故事ことわざ辞典>
として知られています。
これだけを見ると、お大師さまは筆などの道具にはあまり関心がなかったかのように捉えられるかもしれませんが、実はお大師さま自身
誰よりも筆(道具)の選び方や扱い方に気を配っていた
のです。
これは、真書用の筆1本、行書用の筆1本、草書用の筆1本、写経用の筆1本の合計4本の狸毛(りもう)でできた筆を嵯峨天皇に献上した時の様子を記した
『狸毛筆献上表(りもうふでけんじょうひょう)』
や、皇太子に筆を献上する時の様子を記した
『春宮に筆を進むる啓』
からも、お大師さまが筆(道具)をいかに大切にしていたか、またその重要性をどれだけ理解していたかがわかります。
お大師さまはあらゆる筆法を自由自在に使いこなすために、人の何倍もの努力をされて来られたからこそ
自分の筆を生かすも殺すも道具次第である
ことを誰よりも理解していたのではないかと思います。
一つの物事を極めるだけでも大変な努力が必要です。
『弘法筆を選ばず』には
物事を極めるためには技術だけではなく道具にも細心の注意をしておく必要がある
という意味が込められていると言えます。
皆さんも、何か一つのことをやり遂げようと思っているのであれば、技術だけではなくその技術がしっかりと発揮することのできる道具を大切にすることを心がけてみてはいかがでしょうか。
<お大師さまゆかりの地>
真言宗 醍醐派 総本山 醍醐寺(だいごじ)
醍醐寺は、弘法大師を宗祖と仰ぎ、理源大師(りげんだいし)・聖宝を開祖とする真言宗醍醐派の総本山で、貞観16年(西暦874年)に開かれました。
<5分くらいの動画で醍醐寺の紹介をされています>
醍醐天皇(だいごてんのう:西暦885年〜930年)は醍醐寺を自らの祈願寺として手厚い庇護を与えました。室町時代の末の『応仁の乱(おうにんのらん)』で寺の存続が危ぶまれましたが、豊臣秀吉(西暦1537年〜1598年)によって再び多くの寺院建築が移築されました。
<6分くらいの動画で醍醐寺の桜の紹介をされています>
桜の名所でもあり、豊臣秀吉が1598年に『醍醐の花見』をしたことでも有名です。今回のブログにも出てくる嵯峨天皇に献上した筆について記された『狸毛筆献上表(国宝)』は醍醐寺の霊宝館(宝物館)に大切に保管されています。
所在地:〒601-1325 京都市伏見区醍醐東大路町22
お問い合わせ:075-571-0002(TEL) 075-571-0101(FAX)
交通アクセス:醍醐寺ホームページ
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