新米小坊主の小話 お大師さまから学ぶ“前に進む力”

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

今日は、高野山真言宗 僧侶の川本祐道(ゆうどう)として、密教に関するちょっとした小話(こばなし)をします。

サクッと読めるように心がけていますので、お気軽に読んでみてください。

(*´▽`)ノノ

今日の『お大師さまゆかりの地』は、四国八十八ヶ所霊場第三十五番霊場 清瀧寺(きよたきじ)です。

(*^-^*)

 

お大師さまから学ぶ“前に進む力”


 

お大師さまはその生涯を通じて

 

世のため人のため

 

に尽くされ、今もなお、高野山の奥の院で人々の幸せのためにおられると信じられています。

そんなお大師さまのイメージは

 

超人

天才

真面目

規律(修行)に厳しい

 

などの認識を持っておられる方も多いかと思います。

しかしお大師さまの人生を紐解くと、意外と思われるかもしれませんが

 

礼儀

決まり事

 

というものに対して思わず首をかしげたくなる行動や言動も目立ちます。

( ◔◔ ? )

 

例えば、18歳の時に両親の願いをもとに、叔父である阿刀大足(あとのおおたり)の推薦を受けて、当時は身分の高い貴族しか入学できなかった

 

大学

 

に入学します。

両親や叔父の期待も多く、僧侶の出世コースであった大学で学べば、将来有望な官吏(官僚)になることも、いずれ大きな寺を任される立場になることもできたはずですが、あっさりと退学してしまいます。

退学理由を特に両親や叔父に報告するわけでもなく、その後は二十歳頃まで厳しい山野を巡る修行の旅を続けました。

【関連記事】

リンク:新米小坊主の小話 よしっ!唐に行こう!

 

大学を中退したお大師さまは唐に渡る決意をしますが、大学を辞めたこともあり、正式に国からの認可を受けた僧侶という立場で遣唐使船に乗ることが難しかったため、いわゆる

 

私度僧(しどそう)

 

という無認可僧として叔父である阿刀大足の支援を受けて遣唐使船に乗りました。

唐に渡ったお大師さまは、そこで密教の師匠である

 

恵果阿闍梨(けいかあじゃり)

 

と出会い、密教の全てを託されます。

しかし、私度僧として唐に渡ったお大師さまは、国の決まりであれば

 

最低でも20年は唐にとどまる

 

ことが義務付けられていたのですが、わずか2年で勝手に帰国してしまいます。

通常であれば、帰国と同時に厳しい罰が待っており、最悪の場合は

 

命の危険もある

 

状態でしたが、阿刀大足や当時の仏教界で強い影響力のあった

伝教大師最澄

(でんきょうだいしさいちょう)

(西暦766/767年〜822年)

の支援もあり、実質的な謹慎とも思われる2年ほどの間は九州に留め置かれたものの、それ以上の罪を問われることはありませんでした。

叔父である阿刀大足に対しては

 

大学進学

遣唐使としての推薦

唐に渡っている間の金銭的な支援

唐から勝手に帰ってからの恩赦の働きかけ

 

など何かに渡ってお世話になっていたはずですが、阿刀大足のお小言がよほど煩わしかったのか

 

三教指帰(さんごうしいき)

 

というわざわざ書物に残る形で阿刀大足に対して皮肉たっぷりに

 

「めんどくせ〜!(意訳)」

(# ゚Д゚)ンダヨコラァ!!

 

と明らかに怒りを込めた内容が記録されており、これだけをみると

 

恩知らず

 

にも見えてしまいます。

【関連記事】

リンク:新米小坊主の小話 お大師さまがめっちゃ怒る!?

 

お大師さまが唐から無断で帰国した後、朝廷に対して少なからず尽力してくれた伝教大師最澄に対しては

 

「ともに密教を広めるために力を貸して欲しい」

(*´∀`人)オネガイ!

 

と、お大師さま自らが言われて、互いに経典の貸し借りをしていた間柄だったのですが、その経典の貸し借りについて

 

「忙しいからこっちに来てくださいな」

(o・ω・)ノヨロ♪

 

と、お大師さまよりも年長であり、また、当時の僧侶の位(くらい)からしても上の立場であった最澄を呼びつけています。

┐(´~`)┌ヤレヤレ…

 

他にも、嵯峨天皇の次代の淳和天皇(じゅんなてんのう:西暦786年〜840年)から

 

少僧都(しょうそうず)

 

という僧侶の位を賜るはずでしたが、その位を辞退する上奏文では

 

「忙しいので無理っす(意訳)」

(n´Д`)ムリ~

 

と断ったりしています。

【関連記事】

リンク:新米小坊主の小話 どこか不器用なお大師さまの魅力

 

ここまでを見ると

 

親に相談もせず大学を無断でサボる&退学

遣唐使期間を勝手に縮める

恩人の叔父へキレる

仏教の大先輩の最澄を呼びつける

天皇の頼みをあっさり断る

 

と、当時の時代情勢を考えても

 

無礼

ルール無視

 

と捉えられてもおかしくないですね。

 

その一方で、真言密教の僧侶が守らなければならない決まり事として

 

四重禁戒(しじゅうきんかい)

 

というものがあります。

この決まり(戒律)は、修行を続ける上で

 

決して疎(おろそ)かにしてはいけないこと

 

として、お大師さまも弟子たちに厳しく言い伝えています。

この四重禁戒の内容をそれぞれ見ていくと

 

1.不応捨正法戒:正法=密教の教えを捨ててはいけない

2.不応捨離菩提心戒:菩提心=仏さまを体現するための心を捨ててはいけない

3.不応慳悋正法戒:密教の教えを伝えることを惜しんではいけない

4.不応不利衆生行戒:衆生=他人に対して不利益な行為をしてはいけない

 

というものです。

そう考えると先程の話と四重禁戒とを比較してみると

 

大学をやめる→他人の期待や希望を優先して密教の教えを捨てるわけにはいかない(不応捨正法戒

遣唐使期間を短縮→恵果阿闍梨から託された密教をいち早く日本に持ち帰ることこそ菩提心であり、万が一にも罪に問われても自分自身で罪を被れば済むことだという覚悟があった(不応捨離菩提心戒

最澄を呼びつける→密教の教えを少しでも早く多くの人に広めるためには、上下の関係は意味をなさない(不応慳悋正法戒

叔父へキレる・天皇の依頼を断る→特定の人々の不利益を考えるのではなく、より多くの人々の幸せ(=利他)のために行動する(不応不利衆生行戒

 

といった行動原理がお大師さまにあったようにも見え、それは

 

四重禁戒はきちんと守っている

 

ようにも見えますね。

確かに当時の礼儀や決まり事からしたら、お大師さまの振る舞いは決して褒められたものではないとは思いますし、ルール違反をしまくっているようにも見えます。

しかしお大師さまはそれでも

 

「密教をこの手で完成させてより多くの人々の幸せに尽くさねば!」

o(・`д・´。)ヤラネバ!

 

という強い思いを持ちながら

 

自分自身がもっと成長したい!

社会をもっと良くしたい!!

そのための革新的改革をどんどん進めたい!!!

 

と考えて、ひたすら前に進むことをされてきたのではないかと思います。

 

今の時代、どこか自己中心的で自分さえ良ければ良いという流れになりやすい中で、お大師さまが自分自身の行動において

 

前に進むための覚悟を持って臨んでいた

 

ことは、今を生きる私たちも学ぶことが多いのではないかと思います。

 

とはいえ、さすがに身内の文句を書き記すことや、目上の人を呼びつけたり、上司の依頼を無視したりすることは避けたいですね。

(´・д・`)ゞサスガニネ…

 

 

<お大師さまゆかりの地>

 

 

四国霊場八十八ヶ所

第三十五番札所

醫王山 鏡池院 清瀧寺

(いおうざん きょうちいん きよたきじ)

清瀧寺は、養老7年(723年)行基菩薩(ぎょうきぼさつ)がこの地を訪れた時に、霊気を感得して薬師如来像を彫られ、これを本尊として影山密院 釋本寺(えいざんみついん しゃくほんじ)として開山されたのが初めとされています。

弘仁年間(810年〜824年)に弘法大師がこの地を訪ね、本堂から300mほどの岩山に壇を築き、五穀豊穣を祈願して閼伽井権現(あかいごんげん)龍王権現(りゅうおうごんげん)に七日間の修法をされ、最後の七日目の結願の日に岩の上を金剛杖(こんごうつえ)で突いたところ、清水がこんこんと湧き出て滝になったことが寺の名前に由来になったとされています。

<約4分の動画で清瀧寺を紹介しています>

この清水は、田畑を潤すだけではなく、和紙の原料である三椏(みつまた)をさらして紙を漉く(すく)うえでも重宝され、高知県を代表する土佐和紙産業(とさわしさんぎょう)を興すことにも貢献しています。

<三椏の花>

清瀧寺は本堂の屋根よりも高い大きな薬師如来がシンボルであり、厄除け祈願の寺としてもその名を知られています。

<薬師如来立像>

お大師さまの高弟の一人でもある高岳親王(たかおかしんのう)が弘法大師の夢のお告げで出家して真如(しんにょ)と名乗り、唐に渡る直前にこの寺を訪ねて息災増益を祈願して、五輪塔を建立したとされています。

なお、この五輪塔は高岳親王塔と呼ばれていますが、この塔は高岳親王が生前に建立した墓標(逆修の塔:ぎゃくしゅうのとう)であることから、この塔のある一帯は聖域とされ、立ち入りを禁止されています。

所在地:〒781-1104 高知県土佐市高岡町丁568-1

電話:088-852-0316

交通アクセス:四国八十八ケ所霊場會

 

 

 

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