こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
シリーズ『終活』では人生の終わりに向けて取り組むことについてお伝えしています。
『終活』シリーズの第3回目の今回は、『自分の心づもりをきちんと残す 終活におけるアドバンス・ケア・プランニング』についてお伝えします。
今回の『終活』シリーズの話を読み進めることと同時に、過去にブログ内で紹介させていただいた
『終活』を考える前に読んで欲しい3冊の本
も是非参考にしていただきたいと思います。
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目次
『終活』における医療行為の課題
『終活』では多くの人が
必要以上の医療行為あるいは効果が期待できない延命治療を望んでいない
と回答されます。
そして
状態が急変して心停止をした時に無理に心肺蘇生をしないで欲しい
といった意思表示のことを
DNRもしくはDNAR
と言うことをお伝えしました。
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DNR/DNARを行っておくことは必要ですが、それだけでは問題点も多く
DNR/DNARを含む医療行為への意思表示は『終活』のごく一部にしか過ぎない
ことへの認識があまりされていないために
十分なコミュニケーションがなされないまま必要以上の医療行為が行われる、もしくは必要な医療行為までもが行われない
という点も指摘しました(下図参照)。
こうした問題点は、個人の問題でおさまることではなく、場合によっては
裁判など訴訟問題に発展する
こともお伝えしました。
そういった問題を回避するためにも、しっかりと本人・家族の意思を確認するために医療従事者とともに
普段からしっかりとコミュニケーションをとっておく
求める医療行為について記録に残しておく
残している記録をいつでも変更できるようにしておく
変更内容を共有できるようにしておく
ことが大切になってきます。
ではどのような方法がより望ましいのでしょうか。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは
『終活』における医療行為の課題について、最近では
アドバンス・ケア・プランニング
(Advance Care Planning:通称ACP)
という方法が注目されています。
アドバンス・ケア・プランニングとは
これから受ける医療やケアについて、あなたの考えを家族や医療者と話し合って、「私の心づもり」として文書に残す事で、あなたの希望や思いを医療やケアに反映するための手順のことを言います。
(平成27年広島県地域保健対策協議会制作資料より一部抜粋)
このアドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)の背景には、医療行為に対する意思表示であるDNR/DNARで十分に反映されなかった本人・家族の意向を
当事者と医療従事者との間でのコミュニケーションに重点をおくこと
定期的な見直しを行うことで状態変化に速やかに対応できる体制を作ること
によって
より本人・家族に寄り添った医療行為を提供することができる
だけではなく
急変時や状態変化時に本人・家族の動揺や不安を最小限に留める
といったことが可能になるとされています。
2018年には、ACPの愛称を
人生会議
とし、11月30日(いい看取り・看取られ)を
人生会議の日
とし、人生の最終段階における医療・ケアについて考える日としました(参考:厚生労働省『ACPの愛称を「人生会議」に決定しました』より一部抜粋)。
ACPの進め方については大阪府のホームページにも掲載されている図が大変わかりやすいので、そちらも参考にしていただけたらと思います。
<出典:大阪府ホームページ>
ACPのポイント
ACPのポイントは以下の3つをあげることができます。
1.ACPは関係者が自発的に話し合うことを大切にしている
ACPの主役は当事者である
本人と家族
であることは間違いありません。
その上で、誰かから言われて行うことではなく
あくまでも自発的に話し合いの場を持つ
ことが大切になってきます。
その上で、本人が望めば家族だけではなく友人も交えて話し合いの場を持つことも可能です。
そして、本人の同意のもとで話し合いの結果が
記録される(記述される)
定期的に見直される
ケアに関わる人全てが共有する
ことに重点を置いています。
実際にACPの話し合いの内容としては
本人の気がかりや意向
本人の人生の価値観や目標
本人の病状や予後の理解
本人の治療や療養に関する意向や選好およびその提供体制
などが話し合われます。
こうした話し合いの場そのものを大切にするのもACPの特徴であると言えます。
2.ACPは意向をきちんと記録として残す
ACPにおける本人の意向について、その記録内容はさまざまですが、基本的には次のような内容を記録として残しておきます。
①本人が大切にしていること(人生観、生き様など)
②自分の生き方(価値観、心境など)
③病気になった時に望む医療やケア、望まない医療やケア
④自分で意思表示ができない時に望む治療
⑤自分の代わりに判断して欲しい人
⑥これだけは嫌なこと
⑦最期まで暮らしていたい場所
これらのことを記録しておくことで、本人にもしものことがあった場合に
きちんと本人の意向にそった医療・ケアが行える
ようになります。
前回のブログで紹介したDNR/DNARの課題である
「実際のところはどうなんだろう」
o(-_-;*) ウゥム…
「本当にこの決定をして良かったのだろうか」
(o´Å`)ウ〜ン…
といった不安や精神的負担(この場合は家族の負担)をできる限り少なくすることができます。
3.ACPは話し合いの過程そのものを大切にする
本人の意思が決まれば
「書面だけでいいじゃない」
(*´・ω・ノ)ジャナイ?
「遺言書とかでまかなえるじゃない」
(´・ω・`)ダヨネ?
と思われるかもしれませんが
人の心はその時の状況で物の見方や考え方の浮き沈みを繰り返す
という特徴があります。
特に、本人にもしものことがあった場合には、本人の意思を判断する第三者(代理決定者)が今までどのような過程を経て本人の意向が記されているかがわからないととても不安になります。
同様に、医療従事者側としても、どのような過程を経て本人の意向が記されているのか分からないと
医療行為を行うべきかやめるべきか判断に迷う
のも事実であり、間違った判断をしてしまうと
裁判などの訴訟に発展する
ので、医療行為については必然的に慎重になってしまいます。
こうした点からも、ACPでは当事者同士が何度も集まって
話し合いをする過程そのものを大切にする
ようにしています。
そして、話し合いをする過程を経て、変更点なども含めて本人の意向を共有することで
本人について深く理解することができる
複雑な状況に対応することができる
と言われています。
また、元気なうちからACPに取り組むことで
結果的に本人の死生観にもつながる
ことが言え
これからの人生をどう生きるのかを前向きにとらえて過ごすことができる
と言えます。
これまでのACPについて述べた枠組みを下図に示しましたので、参考にしてください。
ACPと終活との関係
ここまでお伝えしたように、ACPは
本人を含む関係者が自発的に話し合いをして
話し合いの内容を記録して
話し合いそのものの過程を大切にして
変更点や改善点などを繰り返し確認していく
ことがポイントになります。
その結果、終活においては
本人の納得のいく最期の迎え方を決めることで
本人の自己コントロール感が高まり
本人や家族の満足度が向上し
残された家族の不安や抑うつが減少する
と言われています(Teno JAGS 2007)。
そしてこれは病院以外での看取り・看取られの実現にもつながることで
本人の望む場所で最期を迎えられる
ことが非常に大きなポイントとなります。
ACPの課題
ここまではACPの流れについて、ポイントとなるべきところを中心にお伝えしました。
一見するとDNR/DNARの時と違って
「本人の意思がかなり尊重されるのでとても良いのでは」
(*´▽`)ノヨロ~
と思われたかもしれませんが、ACPには主に3つの課題があります。
1.定期的な話し合いの時間が必要なので時間と手間がかかる
何度も関係者で顔を合わせる必要があるのですが、なかなか話すタイミングが得られず
最初に決めたままの状態になってしまう
ことも珍しくありません。
特に医療関係者と頻繁に話し合いをする場を持つことはなかなか難しいので、変更したい内容が反映されないままになってしまうことも少なくありません。
そうした問題を解決するために
普段からかかりつけ医に相談しておく(話し合いへの参加も促す)
かかりつけの医療機関のソーシャルワーカーに話し合いの場の設定を依頼する
介護保険を利用しているのであれば介護支援専門員(ケアマネージャー)に話し合いの場の設定を依頼する
1番の鍵になる代理決定者との意思疎通を普段から心がけておく
といった取り組みが必要になってきます。
2.ACPの持って行き方によっては『希望の喪失』や『抑うつ』に繋がることもある
基本的に
医療行為
に重きを置いてしまうことが多くなるので、どうしても
自分の病気と向き合う
ことが多くなります。
前向きに生きるために行うはずのACPですが、病気に焦点が当たりすぎると
希望を喪失してしまう
絶望感に苛まれる
抑うつになる
といった、マイナス思考を強めてしまうこともあります。
こうした問題に対して、ACPを行う際に
心療内科医に関わってもらう
臨床心理士や作業療法士に関わってもらう
病気のことだけではなく人生そのものに焦点を当てた話し合いにしていく
といった
精神面でのフォローアップが取れる体制を作りながらACPを進めていく取り組み
がなされてきています。
3.持病によってはACPに取り組むタイミングが難しい
例えば、がん患者さんの場合は亡くなる1〜2ヶ月で急速に状態が悪化することが多いため、告知されてからの予後予測が比較的つきやすいので、ACPに取り組むタイミングが比較的わかりやすいと言われています。
しかし
呼吸器疾患
腎臓系疾患
心疾患
を持病に持つ人の場合、とても調子が悪くなったかと思えば、治療の経過で一時的なものも含めて状態が改善してくるといった
憎悪と寛解(かんかい)を繰り返す
傾向にあるので、改善可能の変化なのか、それとも終末期に入っているのかの判断が難しく
どこまで医療行為を継続するのか
どの段階で医療行為を行わないのか
が非常につかみにくく、ACPに取り組むタイミングやその内容が非常に複雑になる傾向にあります。
さらに
認知症
加齢による衰弱
では
自己判断能力をどこまで尊重すべきなのか
そもそもいつからが終末期なのかが不明確
といった要因から、ACPを行うことが難しいとされています。
医療が進歩してきたことで、平均寿命も飛躍的に伸びてきている一方、ACPについての課題も非常に複雑になってきています。
それでも、少しずつACPに対する認知は上がってきており、さまざまな状況を想定してのガイドラインもできてきているので、今後の取り組みに期待をするとともに、積極的にACPを活用していくことも必要だと思います。
こうした取り組みは、厚生労働省をはじめ、各自治体のホームページ、日本医師会などにおいて
ACPへの理解と普及
に努めていることも知っていただけたらと思います。
<厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン>
<日本医師会:終末期医療に関するガイドラインの見直しとACPの普及・啓発>
まとめ
今回は『終活』シリーズの第3回目として『自分の心づもりをきちんと残す 終活におけるアドバンス・ケア・プランニング』についてお伝えしました。
今回もいろいろな用語が出てきて分かりにくかったところもあると思います。
<(_ _)>スイマセン…
でも『終活』を考える上で医療行為は避けて通れないところであり、その時のための備えとして
ACPとは何か
ACPの取り組み方
ACPの課題
について知っておくことは、とても大切なことになってきます。
自分自身のことならまだしも
「私はまだまだそんなことを考えたくない!」
ハァ?( °᷄д°᷅)
「そんなに病状が悪いの!?」
(゚Д゚)ハァ?
「なんでそんなに急かすの?」
ンデダヨ(o´Å`)=з
と言っているご家族にACPについて話をすることは難しいとは思います。
でも、いざという時に最も混乱するのが
医療行為
であることを理解していただいた上で
ACPについてまず自分自身のことで考えてみる
それから家族にも提案してみる
ことも大切なのではないかと思います。
この『終活』シリーズを通じて、自分自身あるいは身近な人と『終活』について話をしてみて、これからの人生の過ごし方について少し考えてみてはいかがでしょうか。
皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。
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