『終活』を考える前に読んで欲しい3冊の本

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

医療・介護・福祉の現場で働いている以上、

 

 

について向き合うことも少なくありません。

私の場合は、作業療法士として、また、高野山真言宗の僧侶として人の『生と死』に向き合うことがあります。

最近では「人生のわりについて考える動」、略して

 

終活(しゅうかつ)

 

という

 

自分の人生の最後に向けて前向きな気持ちで準備を行う活動

 

あるいは

 

何かあった時に困らないよう、また、家族の負担を減らすための活動

 

への取り組みも広まりつつあります。

 

エンディングノートの作成

 

もその一つと言えます。

 

自然災害がいつどこで起こるか分からず、また、思わぬ事故や病気にあう可能性が無視できなくなってきているので、年齢や性別を問わずに『終活』への関心は高まってきていると言えます。

今回は、そんな『終活』を考える前に、ぜひ読んでいただきたい3冊の本(うち1つは映画)について紹介したいと思います。

いずれも、『死』について触れている内容ですが、決して暗い話だけではなく、

 

私たちは『死』をどのように考えていけばよいか

 

を客観的に見つめるための題材になると思います。

 

*敬称は全て「さん」で統一させていただいています。

 

1.安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと


 

最初にご紹介する本は、

安藤 泰至(あんどう やすのり)さんの著書である

 

『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』

 

です。

著者の安藤さんは、鳥取大学医学部保健学科准教授(2019年現在)として、宗教学・生命倫理・死生学の観点から、学生や一般の人向けの講演や執筆活動をされています。

主な著書として

『「いのちの思想」を掘り起こすー生命倫理の再生に向けて』(岩波書店)

『激動する世界と宗教 宗教と生命』(角川書店)

『シリーズ生命倫理学4 終末期医療』(丸善出版)

などがあります。

今回ご紹介する本では、

 

安楽死や尊厳死をめぐる議論がなぜ混乱するのか

 

についての問題に対して、そもそも安楽死や尊厳死という言葉が本来どのような意味で使われ始めたのか、その歴史的な背景を理解するとともに

 

「よい死」を語る前に私たちが議論すべきこと

 

について、

 

尊厳ある生き方・死の自己決定権」・「延命治療」とは何か

 

を鋭い切り口で書かれています。

 

ちょうど私がこの本を手にしたのが

 

福生(ふっさ)病院における透析中止問題

透析中止で女性死亡 遺族が福生病院を提訴

東京都福生(ふっさ)市の「公立福生病院」で昨年8月、腎臓病患者の女性=当時(44)=が人工透析を中止して死亡した問題で、女性の夫(52)と次男(21)が17日、透析再開を希望したのに医師側が応じなかったとして、病院を運営する福生病院組合に2200万円の慰謝料を求める訴訟を東京地裁に提起した。

 訴状によると、女性は昨年8月9日に福生病院で、医師から「血液透析は治療ではない。腎不全による死期を遠ざけているにすぎない」「多くの犠牲もつきものであるため、最も大切なのは自己意志だ」と説明され、透析を継続して手術を行うか、透析をやめるかの選択肢を示された。女性は透析離脱の同意書に署名。入院後、同月16日には看護師に「こんな苦しいなら透析した方がよい。撤回する」と話し、看護師から医師にも報告されたが透析は再開されず同日死亡した。

2019.10.17 産経新聞より

 

が新聞報道などで大きく取り上げられ、議論を巻き起こし、その後、裁判となった時期でもあったので、この本を読みながらとても考えることが多かったことを覚えています。

 

この本は、62ページという比較的少ないページを4章に分けて構成されています。ページ数は少ないのですが、文字が多いため、最初は読みにくいかもしれませんが、何度も繰り返して読める内容になっています。

読むたびに、考えさせられることも多く、また、実際に「終活」をしている方とお話をさせていただく時に、医療行為としてできること・できないことを一緒に考えるためのツールとして本書を参考にしています。

 

 

2.死にゆく患者(ひと)と、どう話すか


 

 

次にご紹介する本は、

著者:國頭 英夫(くにとう ひでお)さん

監修:明智 龍男(あけち たつお)さんである

 

『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』

 

です。

タイトルだけをみると難しそうな内容に感じる方もいるかもしれませんが、本書では國頭さんと看護学生さんが

 

『コミュニケーション論』

 

を中心に、対話形式で書かれているので、とても読みやすい構成となっています。

著者の國頭さんは、日本赤十字医療センター化学療法科(腫瘍専門)の部長であり(2019年現在)、医師としてがん患者さんの治療やターミナルケア・終末期医療に長く携わって来られ、また、ドラマ『白い巨塔(2003年 フジテレビ)』の医療監修もされています。

國頭さんは、里見 清一(さとみ せいいち)という名前でも多くの著書の執筆をされています。

主な著書として

『見送ル ある臨床医の告白』(里見 清一 新潮社)

『偽善の医療』(里見 清一 新潮社)

『希望というなの絶望 医療現場から平成ニッポンを診断する』(里見 清一 新潮社)

などがあります。

監修の明智さんは、名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野の教授(2019年現在)であり、医師としてコンサルテーション・リエゾン精神医学、精神腫瘍学、気分障害、がん患者さんに対する心理社会介入に長く携わっておられます。

著書に『がんとこころのケア』(NHK出版)などがあります。

今回の『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』では、本書内で國頭さんと

 

『明智先生と考える がんのコミュニケーション』

 

と題して対談をされています。

今回ご紹介する本では、

 

患者さんへの余命宣告はどう伝えるのか

 

いのちの最前線で患者さんやご家族にどんな言葉を伝えるのか

 

などについて、医療ドラマの『白い巨塔』や『コード・ブルー』のワンシーンを例に、國頭さんと看護学生さんとの熱い議論が書かれています。

医療従事者である看護師の卵たちとのやり取りと聞くと、一般の人にはとっつきにくい感じがしますが、

 

まだ臨床に出ていない学生さんたちの素朴な疑問や反応は、医療とは関係のない人たちが抱くものと同じように感じる

 

と思います。

また、医師がどんな考えで患者さんやご家族とコミュニケーションをとっているのかを、ドラマのワンシーンを例に挙げて解説しているので、私たちが当事者として医師と話をする時にとても参考になります。

 

この本は、約290ページを7講+課外授業(國頭さんと明智さんの対談)に分けて構成されています。

1つの講そのものは約30ページずつで分けられているので、意外なほどサクサクと読めますし、気になった講だけを選んで読んでも、話の全体像が分かりやすくなっています。

これから「終活」を考えている方や、ターミナルケアの現場などで働いている専門職の方、実際に自分や家族が余命を宣告された時にどのような言葉を用いるのがよいのか悩んでいる方など、

 

どんな言葉と心を求め、どんな言葉を伝えるか

 

をより深く理解して実践につなげていくものとして、本書はとても役立つと思います。

 

 

3.エンディングノート【DVD】


 

 

最後にご紹介するのは、

主演:砂田 知昭(すなだ ともあき)さん

監督砂田 麻美(すなだ まみ)さん

プロデューサー:是枝 裕和(これえだ ひろかず)さん

 

『エンディングノート(DVD)』

 

です。

この作品をきっかけに、自分自身の『エンディングノート』作成を意識するようになった人も多いのではないでしょうか。

写真引用:2011「エンディングノート」製作委員会

あらすじ

高度経済成長期に熱血営業マンとして駆け抜けた「段取り命!」のサラリーマン。

ガンという、ふいに訪れた人生の誤算をきっかけに彼が手掛けた最後のプロジェクトは、

「自らの死の段取り」だった。

2009年、東京。熱血営業マンとして高度経済成長期に会社を支え駆け抜けた「段取り命!」のサラリーマン・砂田知昭。

67歳で40年以上勤めた会社を退職、第二の人生を歩み始めた矢先に、毎年受けていた健康診断でガンが発覚。すでにステージ4まで進んでいた。残される家族のため、そして人生の統括のために、彼が最後のプロジェクトとして課したのは「自らの死の段取り」とその集大成とも言える“エンディングノート”の作成だった。

やがてガン発覚から半年後、急に訪れた最期。

果たして彼は人生最後の一大プロジェクトを無事に成し遂げることができたのか?

そして残された家族は-。

エンディングノート 公式ホームページより>

 

主演でもある砂田 知昭さんと監督の砂田 麻美さんは父と娘という関係でもあり、主演と監督という関係でもあります。

自分の父親である知昭さんのガンの告知を受けてから、その最期までを、麻美さんはカメラのファインダー越しに撮り続け、知昭さん、家族、仕事仲間たちといった人たちの心の動きや麻美さん自身の心の動きを淡々と、それでいて暖かい光景として映し出しています。

 

ガンの告知を受けてからも、自分のスタイルで死を迎えようとする父・知昭さん。

 

子供の成長過程を8mmフィルムに収め続けた父・知昭さん。

 

企業戦士としてバリバリの営業マンだった父・知昭さん。

 

知昭さんの死を、その最後まで支え続けた奥さん。

 

父・知昭さんの最期までをフィルムに収めながらも監督としてだけではなく娘としての心を表現した麻美さん。

 

人生の最後を迎えることは悲しいことばかりではなく、笑いあり、感動があり、涙があることを教えてくれる作品です。

私も何人かにこの映画を紹介しました。

映画を観た方の中には、この作品をきっかけに、『終活』について考えるようになったり、実際に取り組んだりし始めた人がいました。

その一方で

 

「実際に自分の夫が同じようになったとして、自分自身が冷静でいられるか、この作品を観て少し不安になった」

 

と率直な感想を言ってくださる方もいました。

 

死は美しいものばかりではない

 

でも、悲しいばかりでもない

 

そう思える作品だと思います。

 

 

まとめ


 

今回は、『終活』を考える前に、ぜひ読んでいただきたい3冊の本(うち1つは映画)について紹介しました。

自然災害がいつどこで起こるか分からず、また、思わぬ事故や病気にあう可能性が無視できなくなってきている時代の中で、年齢や性別を問わずに高まりつつある『終活』について、今回紹介させていただいたものが、

 

私たちは『死』をどのように考えていけばよいか

 

を客観的に見つめるきっかけになり、自分自身や身近な人の人生の終着までの心の道標になればと思います。

 

 

皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。

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2 件のコメント “『終活』を考える前に読んで欲しい3冊の本

  1. こちらのブログを教えていただき拝見させていだだいています。自分の心境と重なるところもが多々、あり涙することが多く今は私の参考書のようになっています。これからも宜しくお願い致します。

    1. やまおさん
      コメントありがとうございます。ご自身の心境と重なる部分が多いとのこと、お辛いことを体験されてこられたと推察いたします。
      私のブログを読んでいただき、少しでもお役に立てるおであれば、とても嬉しいですし、何より、やまおさんがこれからもブログを楽しみにしてくださることで、やまおさんのような方々が少しでも気持ちが楽になっていただけるのであれば、本懐であります。
      これからもお気軽にブログにお越しいただき、コメントもいただけるとありがたいです♪よろしくお願いいたします

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