IQと『知能』との関係

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

 

20年以上、作業療法士として仕事をしていると、いろいろな人からの相談を受けることがあります。

そんな中、学習に不安のあるお子さんのお父さん・お母さん、学校生活で授業についていけないお子さんのお父さん・お母さんから、

 

「この子はIQが低いから『知能』が低いのでしょうか」

 

と聞かれることがあります。

多くの方は、IQ=『知能』と認識しておられるようで、

 

IQが低い=『知能』が低い

 

逆に

 

IQが高い=『知能』が高い

 

と認識されているようです。

 

でも、果たしてIQの高い・低いを『知能』とひと括りにつなげて良いものでしょうか。

 

そもそもIQとは?


 

IQはIntelligence Quotientの略で、“知能指数”を意味します。

厚生労働省の提供する『e-ヘルスネット』では、知能指数/IQについて次のように説明しています。

 

知能の水準あるいは発達の程度を測定した検査の結果を表す数値。知能のおおまかな判断基準とされると同時に、知的障害などの診断や支援に利用される。

単に学習で覚えた知識や学力ではなく、様々な状況や環境に合理的に対処していくための土台となる能力を知能と捉え、それをわかりやすく数値化したものを知能指数と言います。

<出典:『e-ヘルスネット(厚生労働省)』>

 

要するに、

 

IQは『知能の一部を数値化したもの』

 

であり、

 

IQの結果をすぐに『知能の高い・低い』とは分類できない

 

のです。

つまり、先ほどのお父さん・お母さんの質問にあった

 

「この子はIQが低いから『知能』が低いのでしょうか」

 

という質問については

 

「IQが低い」

 

 

「『知能』が低い」

 

を安易に繋げることはできないということです。

 

IQの測定方法


 

多くの方が認識しているIQの測定方法は

 

『精神年齢÷生活年齢×100』

 

で計算されるものです。

例えば、10歳の子供が15歳の子供が解ける問題のほとんどに正解すればIQは150になるということです(あくまで計算上です)。

 

しかしこの計算だと、年齢によっては極端に高い数値が出たり、平均値が100にならなかったりしてしまいます。

例えば、7歳の子供の検査結果が14歳の精神年齢を示していればIQは200というとんでもない数値になります。

 

そこで、現在では今までのIQの測定方法ではない方法を使うことが多くなっています。

それがDIQ(Deviation Intelligence Quotient)と呼ばれるもので、“偏差知能指数”というものです。

従来のIQが『本来の年齢と知能の年齢の差』を測ることに対して、DIQは

 

『同年齢の集団の中でどの位置にあるか』

 

で表します。

DIQの検査としては

『ウェクスラー式知能検査』

というものがあり、年齢に応じて

幼児用のWPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)

児童版のWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children、通称ウィスク)

成人用のWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale、通称ウェイス)

の3種類があります。

また、一般社団法人 高IQ者認定支援機構が行なっている

『CAMS/キャムズ』

という検査もあります(参照リンク:一般社団法人 高IQ者認定支援機構)。

『田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)』

では、14歳未満のIQ、14歳以上ではDIQを測定できるようになっています。

 

IQもDIQも平均は100ですが、DIQの方が同じ年齢の集団を基準にしているので、学校などの教育現場で同じ学年での知能を測定することに向いています。

低い数値の場合(70以下)であれば、「知的になんらかの問題がある可能性がある」として、さらに細かな検査を行い、必要に応じて知的障害者の療育手帳取得につなげることがあります。

さらにDIQは入学後の健康診断、学習指導などに利用することもできます。

 

『知能』はIQだけでは説明できない


 

IQもDIQも数値化されるものですが、それだけで『知能』を説明したとは言えません。

例えば、『人間性』はIQだけでは説明できませんし、『コミュニケーション能力』もIQだけで説明することもできません。

また、心理学や学校教育現場だけでなく、作業療法士や言語聴覚士もIQの測定検査を学習に課題がある子供さんに行うこともありますが、検査結果の数値だけをみているのではなく

検査中の表情やしぐさ

検査後の感想

他の検査での反応(体を動かす検査、他の人との関わり方の検査など)

普段の生活状況(睡眠リズムは取れているのか、遅刻や欠席をしているのか、親子・友達関係はうまくいっているのか、学校での学習の得意・不得意はあるのかなど)

など、あらゆる場面での子供さんの状況を総合的に見て評価を行うようにしています。

 

なので、最初のお父さん・お母さんの質問を言い換えると

 

「IQが低くても『知能』の高い子もいる」

 

「IQが高くても『知能』の低い子もいる」

 

とも言えるので

 

IQの成績のみで『知能』の高い・低いは判断できないのです。

 

まとめ


 

今回はIQと『知能』との関係についてお話をしました。

少し難しいテーマだったかもしれませんが、IQが高い・低いで安易に『知能』の高い・低いにつなげることはできないことを少しでも知っていただけたらと思います。

また、学習に不安のあるお子さんのお父さん・お母さん、学校生活で授業についていけないお子さんのお父さん・お母さんで、不安のあるかたは専門家に気軽に相談していただけたらと思います。

 

最後までブログを読んでくださり、ありがとうございます!

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