新米小坊主の小話 手当てと癒し

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

今日は、高野山真言宗 僧侶の川本祐道(ゆうどう)として、密教に関するちょっとした小話(こばなし)をします。

サクッと読めるように心がけていますので、お気軽に読んでみてください。

(*´▽`)ノノ

今日の『お大師さまゆかりの地』は、四国八十八ヶ所霊場第二十九番霊場 国分寺(こくぶんじ)です。

(*^-^*)

 

手当てと癒し


 

人は痛いところがあると、自然とその痛む場所に手が行きますよね。

お腹が痛ければお腹に、頭が痛ければ頭に、足が痛ければ足にといった時もあれば、火傷をしたり怪我をしたりすれば、患部に手を当てます。

人が患部に手を当てるのは、理性というよりも本能的に身についていることであり、それは犬や猫などが傷口を舐めて治そうとする行為と本質的には同じです。

つまり手を当てるということそのものに

 

痛みを癒す力がある

 

ことを本能的に知っているので、痛みを覚えた瞬間に反射的に手を当てるのです。

なので、病人を手当てするということは

 

痛みを抱える人の患部に手を当てて痛みを取る

 

ということに由来しており、医師・看護師・救命救急士などの医療従事者が怪我した人を治療することだけを指している訳ではありません。

皆さんも幼い頃、転んで怪我をした時に、お父さんやお母さんが

 

「痛いの痛いの飛んでいけ」

ヽ(´Д`☆)トンデケ~!

 

と言って患部に手を当て、治療をしてもらった記憶があると思います。

そしてその時には、体の痛みだけではなく、優しい眼差しで暖かな声を聴くことで

 

心の痛みも軽くなった

 

という思い出もあるのではないでしょうか。

それは、怪我そのものを治療してもらっているだけではなく

 

お父さんやお母さんを信じているからこそ取れる痛み

 

でもあるのです。

こうした考え方は仏教だけではなく、キリスト教でも伝わっている話からも窺い知ることができます。

イエス・キリストは数々の奇跡を起こしましたが、その中でも

 

手を当てることで多くの人の病を治した

 

という話はとてもよく知られています。

キリストは、病に苦しむ人に対して手を当てる前に

 

「あなたは神秘の力の作用を、そして奇跡が起こると信じますか?」

 

と必ず問うたと言われています。

その理由は、病の人を治すためには、病を治そうとする人(この場合はキリスト)の力だけではなく

 

病を訴える側の協力が不可欠

 

であり、手を当てて人を病から救って癒す場合には、手を当てる側と当てられる側との

 

共鳴効果が必要

 

であったからです。

また、真言密教では、癒す側と癒される側の共鳴のことを

 

加持感応(かじかんのう)

 

と言い、これは人の体や心にはそもそも自身の病気や怪我を治そうとする力があり、病気や怪我を治したいという意思の力にこそ癒しの力が発揮され、それは

 

加持をする側もされる側も互いを心から信頼し

真剣に病や怪我に向き合うことで

人間本来の治癒力を引き出すことができる

 

とされています。

共鳴効果や加持感応だけではなく、先程の話しでの、お父さんやお母さんへ抱く感情が

 

信頼

 

で成り立っているならば、その癒しの効果は絶大であり、体の痛みだけではなく、怪我をしたことで受けた

 

恐怖

不安

トラウマ

 

といった心の痛みをも取り去ってくれることにも通じるものです。

 

人の手に備わっている癒しの力。

これは、いつの時代にも世界中のどの地域においても同じことが言えるだけではなく、現代医療において最も大切とされる

 

治療する側とされる側の信頼関係

 

にも密接に関係するだけではなく、親子や他人への信頼が失われつつある現代社会において

 

本来の癒しの力が失われつつあることへの警鐘

 

も含まれているのではないでしょうか。

 

 

<お大師さまゆかりの地>

 

四国霊場八十八ヶ所

第二十九番札所

摩尼山 宝蔵院 国分寺

(まにざん ほうぞういん こくぶんじ) 

国分寺聖武天皇(西暦701年〜756年)の勅命によって全国六十八箇所に建立されましたが、土佐の国分寺は行基菩薩(西暦668年〜749年)が天平13年(741年)に創建しました。

聖武天皇自らが金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)を書写して納められ、天下泰平・五穀豊穣・万民豊楽を願う祈願所として、金光明四天王護国之寺(こんこうみょうしてんのうごこくのてら)とも呼ばれ、歴代天皇の篤い庇護を受けてきました。

国分寺 大師堂

弘仁6年(815年)にお大師さまがこの地を訪れ、毘沙門天を彫刻して奥の院に安置し、その際に本堂で恵果阿闍梨からお大師さまに伝承された厄除けの秘法である星供の秘法(ほしくのひほう)を修められたことから、土佐国分寺は星供の根本道場とされ、厄除けに絶大なる効果があるとして多くの人々からの篤い信仰を集めてきました。

国分寺 金堂

御本尊は千手観世音菩薩であり、千手観世音菩薩の千本の手は

 

どのような衆生をも漏らさず救済しようとする

観音さまの慈悲と力の広大さを表している

 

とされています。

千手観世音菩薩を祀る金堂は、戦国大名の長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)親子が、永禄元年(1559年)に再建し、外観は柿(こけら)茸きと天平文化に模した寄棟造りが特徴で、内部の海老虹梁(えびこうりょう)と呼ばれる独特の梁(はり)は土佐最古といわれ、室町時代の特色がうかがわれます。

<約5の動画で国分寺の紹介をされています>

土佐の国分寺は平安時代の歌人でもある紀貫之(きのつらゆき:868年〜945年?)とも縁が深く、紀貫之が4年間滞在した国府(こくふ=省庁)は国分寺から徒歩15分のところにあり、この地で紀貫之は『土佐日記』を著したと言われています。

なお、四国八十八ヶ所には第十五番札所と、ここ第二十九番札所、第五十九番札所・第八十番札所の四箇所に国分寺という名前のお寺があります

所在地:〒783-0053 高知県南国市国分546

お問い合わせ:088-862-0055(TEL)

交通アクセス:土佐国分寺ホームページ

 

 

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2 件のコメント “新米小坊主の小話 手当てと癒し

  1. こんにちは。
    全てにおいて「信頼」が基本ですね。
    本来の癒しの力を発揮するためにも、信頼関係は不可欠なんですね。

    1. KEIKO OKADAさま
      いつもコメントありがとうございます^_^
      生きるということは、信頼の絆の連続だと私は思います。
      時に辛く苦しいことがあっても、信頼できる相手がいれば、いずれその苦難は改善されるという考え方は、ずいぶん昔から言われていることでもありますね。
      本来の癒しを発揮するための『信頼』が失われつつある昨今だからこそ、大切なことだと思います。
      またお気軽にコメントをいただけると嬉しいです(*^_^*)

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