熱中症から高齢者を守ろう! 大切な家族を熱中症から守る方法

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

熱中症への対応を本格的に行わなければならない季節になり、このブログでもシリーズで『熱中症』について扱っています。

今回は、『熱中症から高齢者を守ろう! 大切な家族を熱中症から守る方法』というタイトルで、熱中症にかかりやすい高齢者への対応についてお伝えします。

 

高齢者の熱中症はなぜ多いのか?


 

過去のブログで何度も紹介させていただいていますが

 

熱中症で死亡する人の8割以上が65歳以上の高齢者

 

です。

高齢者が熱中症になりやすいこととして

 

①暑さや渇きを感じる脳のセンサーの機能

 

②汗をかく機能(発汗機能)

 

③体調・体力の状態

 

④血液の状態

 

⑤体の中の水分量

 

といった機能の衰えもしくは著しい低下があることで、熱中症になりやすい人になっています。

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また、高齢者の多くは

 

暑さに対する感度が落ちて、不快に思わなくなること

 

によって「かくれ脱水」の状態になっているにも関わらず、そのことに気づかずに体から水分がどんどん奪われて脱水状態になっていて、気がつけば

 

熱中症予備軍

 

になり、少しの暑さの変化であっても熱中症になってしまうのです。

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その他にも、足腰の衰えや家の造りによってはトイレに行くことそのものが苦痛であったり、排尿障害などでトイレに何回も行かなければならないことを嫌がって水分を摂らなかったりするため

 

1日の水分摂取量が極めて少ない

 

ことが高齢者に多いことも、熱中症になりやすい要因となっています。

 

高齢者同士の介護での熱中症


 

高齢者が熱中症になりやすいことの要因の一つとして、高齢者同士の介護、いわゆる

 

老老介護

 

によって、介護する側・される側が熱中症になっていることに気づかないことが指摘されています。

厚生労働省が発表した2019年国民生活基礎調査によると、介護が必要とされる要介護者と同居する主な介護者との組み合わせを年齢別に調べたところ

 

65歳以上同士が過去最高の59.7%

 

であり

 

75歳以上同士も過去最高の33.1%

 

となっています。

(資料参考:厚生労働省 2019年国民生活基礎調査の概要

 

他の家族が同居していれば十分に気付けるような環境であっても、老老介護をしている現場では

 

部屋の温度・湿度管理

食事・水分摂取状況の確認

普段から体を動かす習慣(汗をかくことに慣れる)

 

などをお互いに確認し合うことが難しいため、熱中症を見逃しやすくなるだけではなく

 

介護する側の体調不良の時に介護される側(要介護者)が助けを呼ぶことが難しい

 

こともまた、介護する側・される側が熱中症で共倒れになってしまう原因にもなっています。

老老介護の現場で熱中症を予防するためには

 

訪問介護

訪問看護

訪問診療

通所介護(デイサービス)

通所リハビリテーション(デイケア)

 

など、在宅生活を支援する介護保険制度・医療保険制度を利用することで、熱中症を未然に防ぐことに繋がります。

 

高齢者は熱中症を引き起こす病気を持っていることが多い


 

年齢を重ねると、病気になりやすく、それが長期化するのも高齢者の特徴です。

いわゆる

 

基礎疾患

 

を持った状態のことです。

特に

 

心臓血管系の病気(心疾患)

高血圧

糖尿病

 

といった病気では、尿をしっかり出すための

 

利尿剤

経口血糖降下剤

 

を服用していることで、体が必要とする水分までもが体の外に出て行ってしまうため

 

脱水になりやすく

 

なっていることや

 

パーキンソン病治療薬

頻尿治療薬

抗不整脈薬

抗うつ薬

 

などは

 

汗をかくことそのものを抑制する作用

 

があるため、体の中にたまった熱を外に出すことが難しくなり、その結果、熱中症になりやすくなってしまうのです。

また、認知症のように、自分が置かれている状況が適切に判断できない、どのように暑さに対処すれば良いのか分からないといった

 

環境調節能力の著しい低下

 

もまた、高齢者や高齢者だけで暮らしている世帯で熱中症が多い要因にもなっています。

 

少し専門的になりますが、以下に基礎疾患を持つ高齢者の水分補給についてのアドバイスをさせていただきます。

専門用語も多いので、難しいと思ったら記事をスキップしてくださいね。

 

1.基礎疾患を持っている場合は主治医に相談をする

心疾患や腎疾患、重度の肝疾患(肝硬変など)を持っている人は

 

血液の流れが悪くなって滞ってしまう(うっ血)

水分が体に溜まりすぎる(尿や汗で排出されない)

 

といった症状を引き起こすため、自己判断で経口補水液などの塩分を含む水分を摂ると、体の中に水分が溜まり過ぎてしまい、病状が悪化する危険性があります(特に、心不全、肝硬変による浮腫、腹水、ネフローゼ症候群など)。

また、腎疾患がある人で血液透析を行っている場合には、経口補水液を飲むとカリウムの過剰摂取にもなってしまうので、経口補水液ではない水分を必要量摂取する必要があります

普段の水分摂取に関しては、過去のブログも参考にしていただけたらと思います。

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こうした点からも、基礎疾患を持っている場合は

 

あらかじめ主治医に水分制限の有無を確認してその指示に従う

 

ことがとても重要になってきます。

また、食事に関しては

 

1日の塩分摂取量を6g以内に留める

 

ことを行い、主治医の指示がなくても

 

体重測定を1日1回(できれば朝晩2回の方が望ましい)

 

行って

 

体重の増加が2kg以上

浮腫(むくみ)の出現・悪化

 

があれば、すぐに主治医に相談しましょう。

 

2.糖尿病を基礎疾患に持つ人の水分補給

糖尿病は脱水を起こしやすいのですが、経口補水液やスポーツドリンクを摂取すると

 

血糖値が上昇

 

してしまい、尿の中の糖が増加することによって、さらに脱水が進んでしまう危険性があります(これを浸透圧利尿と言います)。

血糖値測定をしなければならない人の中には、脱水によって元気がないように見えても、実際には

 

高血糖

 

からの意識障害や倦怠感なども起きている可能性もあるので、その場合には必ず血糖値を測定して、高血糖(目安は300mg/dL以上の場合には、すぐに主治医に連絡をして相談してください。

汗をたくさんかいている時など、水分摂取を多く行ってもらう必要がある時には

 

0.1%の食塩水(水1Lに対して食塩1gを入れる)に柑橘類で香りをつける

 

といった、糖尿病の人であっても飲みやすく、かつ、必要な塩分のみを摂取できるような工夫をしていただくことをお勧めします。

 

3.認知症や精神疾患がある人の水分補給

認知症や精神疾患のある人は

 

衣服の調整(暑い時に脱いで、寒い時に着る)

室温や湿度を適度に調整する

自らの意思で水分補給をする

 

ことが難しいので、脱水症や熱中症になりやすく、また、脱水症や熱中症になっても

 

どのように体の異変を伝えれば良いかが分からない

 

ことが多いため、気がつけばかなり熱中症が重度化していることも珍しくありません。

そのため、家族や介護者は食事量や水分量を把握しながら

 

定期的に水分補給を促す

 

などを行って、熱中症にならないための取り組みを積極的に行う必要があります。

この時の水分補給の目安については、過去のブログ内でも紹介している

 

食事:約1L

飲み水:約1.2L

体内でできる水:約0.3L

 

を参考に、もし食事が普段の半分くらいしか食べれたいないようであれば、飲み水を1.7L摂取してもらうような工夫が必要になります。

 

「そうは言っても、認知症や精神疾患のある人にはそんなにたくさんの水分補給は難しいです」

(。´・д・)

 

というのは介護の現場でもよく聞かれます。

そんな時は、少しずつでも水分を摂取してもらうことや、こまめに水分を摂る習慣をつける方法として

 

ウォーターローディング

 

を取り入れて、1回の水分量は100mL〜200mLを目安に水分補給をしてもらうことをお勧めします。

 

高齢者を熱中症から守るポイント


 

これまで述べてきたこと含めて、高齢者を熱中症から守るポイントをまとめてみましたので、確認も含めてチェック✅をしてみましょう。

 

温度・湿度計を設置する

温度計・湿度計を設置して、高齢者と同居している人が定期的に確認するようにしましょう。

温度は28℃以上、湿度は60%以上にを上回らないように調整することが大切です。

ただし、エアコンの設定温度や温度計・湿度計だけを過信してはいけないので

 

適度な涼しい風が入ってきているかの確認

エアコンを嫌がる場合は扇風機などを活用する

 

ことも対策に入れておく必要があります。

喉の渇きに頼らない水分補給をする

喉の渇きを感じる脳のセンサーが働きにくくなっているのが高齢者の特徴でもあります。

喉の渇きを感じる前に水分補給をするようにしましょう。

高齢者と同居している人は、定期的に声かけをして水分補給を促すようにしてください。

こまめな水分補給を心がける

外出時には冷たい飲み物を持参してもらい、こまめに水分補給をするようにしましょう。

汗をかいた場合は少し多めに水分を飲むことや、経口補水液・スポーツドリンク・カフェインレスのお茶などを飲み分ける工夫も必要になってきます。

外出の際には小銭なども持ち歩き、コンビニエンスストアや自動販売機で追加で飲み物を買えるようにしておきましょう。

コップ1杯の水(100mL〜200mL)を定期的に飲む

繰り返しお伝えしている

 

ウォーターローディング

 

を取り入れて、1回の水分量は100mL〜200mLを目安に水分補給をしてもらうことをお勧めします。

最低でも

 

毎朝

朝昼夕の食事の前後

入浴前後

寝る前

 

にはコップ1杯の水分(100mL〜200mL)を飲みましょう。

体を動かしたり入浴したりして適度に汗をかく

暑い環境に慣れるための

 

暑熱順化(しょねつじゅんか)

 

は、熱中症予防にとても重要となってきます。

早朝の涼しい時間帯に散歩をすることや

 

インターバル速歩

 

と呼ばれる、大股で腕を振って踵から接地する3分間の早歩き(速歩)と3分間のゆっくり歩きを1日5回以上、週4回以上を4週間続けることを行い、汗をかく機能の低下を防ぐ取り組みを行いましょう。

また入浴も汗を適度にかく上では効果的ですが、入浴前後の水分補給は忘れずに行いましょう。

食事量を減らさないようにする

食事の量が減ってしまうと、食事から体に取り入れる水分の量が減るだけではなく

 

体力そのものが低下する

 

ことになり、熱中症になりやすくなってしまいます。

肉・魚・野菜・ご飯を3食、バランスよく食べることを心がけましょう。

暑い時間帯の外出は避ける

日中の暑い時間帯の不要な外出は避けるようにしましょう。

どうしても外に出る必要がある時には

 

冷たい飲み物

帽子や日傘など日差しを和らげるもの

汗を拭くためのタオル

塩あめなど塩分を手軽に補給できるもの

 

を持って出かけるようにしましょう。

 

こうした高齢者を熱中症から守る取り組みを行うために、家族や介護保険制度で利用できるサービスや行政の担当者とも連携を取りながら

 

できれば1日2回以上の見守り体制(無事の確認ができる)

 

が行えることが望ましいと言えます。

 

ここまでお伝えした『熱中症から高齢者を守るポイント』はPDFでダウンロードできるようにしていますので、ご自由にお使いください。

↓ ↓ ↓

PDF版 熱中症から高齢者を守るポイント

 

まとめ


 

今回はシリーズ『熱中症』の第7回目として『熱中症から高齢者を守ろう! 大切な家族を熱中症から守る方法』というタイトルで、熱中症にかかりやすい高齢者への対応についてお伝えしました。

65歳以上の高齢者は熱中症にかかりやすく、容易に重度化してしまいますが、年齢や持病の影響で慢性的に脱水になっていることに気づかず、そのまま放置してしまいがちです。

その結果

 

気づいた時には生命の危険性が極めて高い状態である

 

ことも少なくありません。

高齢者自身が気づき得ないところは、周りの人たちの声かけがとても重要になってきます。

大切な家族を守るためにも、今回お伝えしたことが少しでもお役に立つことができればと思います。

 

 

皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。

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