こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
今日は、高野山真言宗 僧侶の川本祐道(ゆうどう)として、仏教に関するちょっとした小話(こばなし)をします。
サクッと読めるように心がけていますので、お気軽に読んでみてください。
(*´▽`)ノノ
今日のアイキャッチの画像は、四国八十八ヶ所霊場第六番霊場 安楽寺(あんらくじ)の写真です。
(*^-^*)
目次
お大師さまの学校づくりの4つの条件
前回のブログでは、お大師さまが
向上心がある人なら身分に関係なく誰でも自由に学べる所
として、天長5年(828年)に
綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)
という学校を開かれたというお話をしました。
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お大師さまが考える教育効果を生むための、学校づくりの4つの条件とは次のようなものでした。
1.教育環境(処)
綜芸種智院設置にあたって、お大師さまを信奉していた
藤原三守(ふじわらのみもり)
という人が、京都府左京区の土地を寄付してくださいました。
その土地の素晴らしさについて、お大師さまは『性霊集巻第十』で次のような感謝の言葉を述べられています(現代語風にお伝えしますね)。
清らかな湧き泉や小川に囲まれて、松や竹を揺らす風の音はまるで琴の音のようだ。
春の雨に濡れる梅や柳の木は、錦(にしき)の彩(いろど)りが艶(つや)やかで、春にはウグイスのさえずりが聞こえ、秋には雁(かり)などの鳥が飛来してきます。
夏の厳しい暑さは除かれ、涼やかに過ごすことができます。
都にありながらも、人々が散策するような非常に落ち着いた心地よい静かな雰囲気の土地で、(学ぶための)環境としてはこの上なく理想的なところです。
お大師さまがどれだけ教育環境を重視していたか
を知ることができますね。
2.人文自然のあらゆる学問(法)
綜芸種智院の『綜芸(しゅげい)』とは、いろいろな学問を綜(そう)べ学ぶ、つまり
総合的に学ぶ
ことであり、『種智(しゅち)』は
仏さまの智慧(一切智智:いっさいちち)を植える
ことを意味していることは前回のブログでもお伝えしたところです。
お大師さまは
人文自然のあらゆる学問を学ぶことの重要性
を学校の名前をつける時にすでにその基本に据えていたことがわかりますね。
3.良い教師(師)
どんなに良い環境にあっても、どんなに学ぶことを増やしたとしても、それを教えるための良い教師がいないと
しっかりとした教育はできない
のは今にも通じる話だと思います。
お大師さまは良い教師の必要性について『性霊集巻第十』で次のように述べられています。
どんなに教育環境が良く、様々な学問の本がそろっていても、立派な良い教師がいなければ、その理解は足りないものになってしまいます。
だから、まずは良い教師に来てもらわないといけないのです。
その教師にも2種類あって、仏教を伝える教師(これを『道』という)と世間一般を教える教師(これを『俗』という)であり、この2つからの教えは別々に教えるのではなく一緒に教えなければならないというのが、私の師匠である恵果和上の教えなのです。
そして教師というのは、慈・悲・喜・捨の利他の行い(四量:しりょう)、布施・愛語・利行・同事の利他の行い(四摂:ししょう)の心を持って指導を行うべきなのです。
また、生徒の身分にこだわらず、努力を惜しまずに指導しなければなりません。
これは世間一般の学問の指導をする時も同じ事なのですよ。
教師ならば利他の心を持って教育にあたることが大切
ということをお大師さまは教師の心がけとしてしっかりと持っておくようにと言われていますね。
ここでの『利他(りた)の心』とは、生徒を我が子のように、時には皆が兄弟であるように思う心のことを言っています。
4.衣食の援助(資)
学問を治めることはとても大切なことだと誰もがわかっていても、お腹が空いていては学ぶ気力も失せてしまいます。
お大師さまは
教えの道を広めようと願うのならば、必ずそこに集う僧侶や教師や生徒といった学びの道を志す人たちには食事を与えなければならない。
とおっしゃり
まずは食の確保が大切
ということを言われています。
今までの特権階級のみが学べる教育機関では、食事に困るようなことがなかったので、お大師さまが掲げたこの『食の確保の大切さ』という発想は、当時からしたら革新的なものだったようです。
もちろん、『食の確保』を実現させるためには相当なお金が必要になってくるのですが、そのための費用の寄付もお大師さま自らが諸国をまわって学校設立への協力を働きかけたり、様々な人に援助をお願いしています。
環境を整え(処)、あらゆる学問を学べるようにし(法)、良い教師に来てもらい(師)、衣食に困らないように(資)といった四縁(しえん)を大切にしたお大師さま。
そこには、特権階級だけが知識を持つのではなく
日本全体としての教育の底上げを図ることこそが国の行く末を決める
というお大師さまの強い信念があったことをうかがい知ることができます。
教育は国の宝であるという考えは、今の時代にも通じるものであり、私たちも教育のあり方について考えさせられるきっかけにもなると思います。
<お大師さまゆかりの地>
四国霊場八十八ヶ所
第六番札所
温泉山 瑠璃光院 安楽寺
(おんせんざん るりこういん あんらくじ)
安楽寺は弘仁6年(815年)に弘法大師(お大師さま)により開創されたと伝えられたお寺で、温泉湯治(おんせんとうじ)のご利益が伝えられたことから、山号を温泉山とされました(現在も、大師堂前から温泉が湧き出ています)。
御本尊は薬師如来(やくしにょらい)です。現在の本尊の薬師如来は、その昔、脊髄カリエスという難病を患っていた方が、四国遍路の巡礼の途中に病が平癒したことに感謝され、その報恩のために奉納されたもので、古来の御本尊はその奉納された薬師如来の胎内仏(たいないぶつ:仏像の胎内に納められる仏像)として納められています。
<約4分半の動画で安楽寺の紹介をされています>
安楽寺には、運慶・快慶の流れを汲む慶派の仏師、松本明慶(まつもとみょうけい)大佛師による大小60体からなる仏像が各御堂に祀られています。
松本明慶大佛師による、大師堂の弘法大師像をはじめ、愛染明王(あいぜんみょうおう)、不動明王、五智如来(ごちにょらい)、山門の仁王像(阿形・吽形)は現代仏師の最高峰の名にふさわしい仏像であり、訪れる人々に仏の世界を体感させてくださいます。
(松本明慶 大佛師の紹介:松本明慶佛像彫刻美術館ホームページ)
<松本明慶 大佛師作 『仁王像』>
所在地:〒771-1311 徳島県板野郡上板町引野寺ノ西北8
お問い合わせ:088-694-2046(TEL)
交通アクセス:四国八十八ヶ所霊場會
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