熱中症のメカニズムと応急処置の手順・方法

こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

医療従事者でもある作業療法士は皆さんの健康を保つことについて相談を受けることが多いです。

特にこれからの時期は

 

熱中症

 

に関する質問を受けることも多くなってきます。

では、そもそも熱中症とはどんなことを言うのでしょうか。

また、熱中症が疑われる場合、どのような応急処置が必要なのでしょうか。

今回からシリーズで『熱中症』について皆さまにお伝えしようと思います。

第1回目は『熱中症のメカニズムと応急処置の手順・方法』についてお伝えします。

 

熱中症とは


 

熱中症とは、高温・多湿の環境に対して、体が適応できずに体温の調整がうまくできなくなることで、体内に熱が溜まって高体温(うつ熱)になり、その結果として体の中のさまざまな臓器が障害を受けたり、体の中の水分が減ってしまって栄養や酸素を運び込む血液の流れが悪くなったりすることによって発症する疾患の総称を言います。

つまり

 

生命維持に大切な臓器の高体温と血液不足(虚血:きょけつ)で起こる体調不良

 

のことを言います。

熱中症は以下の4つの健康障害が複数同時に発症したり、一部の症状のみが発症することでも引き起こされます。

 

1.熱失神(ねつしっしん)

皮膚の血管が広がる(拡張する)ことによって、血圧が下がる状態のことを言い、脳への血液が減少することで発症します。

主な症状として、次の3つの状態が挙げられます。

 

めまいや立ちくらみ

顔の異常なほてり(顔が赤くなって熱さを伴って張ったような状態になる)

顔面蒼白

 

2.熱けいれん

汗をかく量(発汗量)が急激に増えて、血液中の塩分(ナトリウム)濃度が低下した時に発症します。

主な症状として、次の5つの状態が挙げられます。

 

足がつる(こむら返りをする)

筋肉のけいれん

手足のしびれ

筋肉の強直(きょうちょく:硬くこわばること)

筋肉痛

 

3.熱疲労

大量に汗をかいた状態が続きながらも水分の補給が追いつかなくなることで発生する症状です。

体が脱水状態にあることが原因で発症します。

主な症状として、次の3つの状態が挙げられます。

 

全身の倦怠感

嘔吐

頭痛

 

4.熱射病

体温が異常に上昇して高体温(うつ熱)状態となり、体温を適切に保つために必要な重要な機能(中枢機能)に異常をきたした時に発症します。

主な症状として、次の5つの状態が挙げられます。

 

体温が高い(40℃以上になることもある)

呼びかけや刺激への反応が鈍い

意識がはっきりせずにボーッとしている、あるいは意識がない

言葉がはっきり出てこない

少し動こうとしてもふらつきが強い

 

熱中症となるメカニズム


 

熱中症となるのは、通常とは異なるメカニズムで余分な熱が外に出ていかないために引き起こされます(下図『熱中症となるメカニズム』参照)。

 

 

体温が上昇して汗をかくと、体内の熱を利用して汗を蒸発させます(気化熱が発生)。

汗の蒸発とともに、上昇した体温が下がっていきます。

また、全身を流れる血液は、内臓などで発生した熱を拾い、熱くなった血液は体の表面の皮膚の毛細血管へ流れてその熱を体の外に放出(放熱)して血液の温度を下げていきます。

そして冷えた血液が再び内臓や体の奥に戻ることで、体の内部の温度が下がるのです。

 

しかし、体の中の水分が不足して十分な汗がかけなくなったり、血液がなんらかの理由でドロドロになって血液の流れが悪くなってしまうと、体温調節機能が働かなくなります。

体温調節機能が働かなくなると、体の中で発生した熱が体の外に放出されずにそのまま残ってしまい、以上な高体温(うつ熱)状態となって

 

熱中症

 

を引き起こしてしまうのです。

 

熱中症の応急処置の手順・方法


 

熱中症を疑った時に、まず行って欲しいのが以下の6つのことです。

 

1.声をかけて意識の状態を確認する

まず、意識がはっきりしているかどうかの確認が大切です。

意識レベルの評価には主に

 

3-3-9度方式

 

という方法が用いられます(下図『3-3-9度方式』参照)。

 

 

しかし『3-3-9度方式』を使うことは医療者や救命活動を行ったことがある人以外ではなかなか急には行えないものです。

そこでとにかく

 

呼びかけに対してしっかりとした反応ができるか

 

こちらの指示に従う行動が行えるか

 

目線を合わせて話ができるか

 

の3つをまずしっかりと確認してください。

この段階できちんとした反応が返ってこない場合は

 

直ちに救急車を呼ぶ

 

ことを行ってください。

 

2.できるだけ涼しい場所に移動させる

救急車を呼ぶにしても、呼ばないにしても、まずは体の温度を下げなければなりません。

そのためにはできるだけ涼しい環境に移動させる必要があります。

涼しい環境とは、理想的には冷房の効いた部屋ですが、公園にいる時や建物が近くにない時には木陰などに避難するだけでも涼しい環境に近くなります。

よく

 

「熱中症対策のために冷房を28℃の設定温度にしています」

(;ง •̀_•́)ง

 

と言われることがありますが、それは快適に過ごせる軽装への取り組みを促すための

 

クールビズ

 

の目安であって、熱中症対策には当てはまらないことに注意が必要です。

冷房の温度設定を28℃にしていても、熱中症を疑われる人にとって必ずしも涼しい環境であるとは言えないので、温度設定にこだわらずに温度をしっかりと下げることも重要です。

また冷房には除湿も同時に行われるので、かいた汗が乾きやすく、気化しやすいので体の温度を下げる効果も強まります

屋外で冷房のない場所であれば、日陰で涼しい場所を探して移動させた上で、服をできるだけ外してもらい、体そのものを水などで湿らせてから、扇風機やうちわなどでしっかりと送風してして体の表面の熱を蒸発させるなどの工夫が必要です。

自動車が近くにあれば、エンジンをかけて冷房を最大に効かせて冷やすことも一つの方法です。

 

3.衣服などをゆるめ、体を締め付けるものをできるだけ外す

ボタンやベルトなどをゆるめ、可能な限り外せるもの(靴下や上着やズボンなど)は外しておきます。

これは、体の中の血液の流れをよくするためと、できるだけ体の表面から熱を逃すために大切な処置でもあります。

 

4.太い静脈が通る『首』『脇の下』『脚の付け根』を冷やす

体内にこもった熱をとるためには

 

体の表面近くの太い静脈を冷やす

 

ことが効果的です。

 

首の前側の両脇、首の後ろ、脇の下、脚の付け根(鼠径部:そけいぶ)に、保冷剤や氷のう、冷えたペットボトルなどを当てます。

保冷剤や氷のうはできればタオルもしくは衣類などでくるみ、直接肌に保冷剤や氷が当たらないようにしましょう

保冷剤や氷が直接肌に当たると

 

低温火傷

 

を生じることがあります。

 

5.仰向けで足を少し高くして心臓への血流を増やす

毛細血管からの熱の放出(放熱)を行うためには、血流をよくする必要があります。

熱中症の症状の一つである熱失神は、皮膚の血管の拡がりと足への血液がたまって移動しないことによって血圧が低下し、脳への血流が減少して起こるため、足を少し高くして心臓への血流量を増やし、脳へも十分に血液が流れるようにする必要があります。

 

6.水分を摂ってもらう

理想は経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)やスポーツドリンクが望ましいのですが、なければお茶でも水でも構いません。

お茶や水の場合は、可能であれば食塩を少し溶かしたり(0.1〜0.2%の食塩水:水1Lに対して1〜2gの食塩を加えたもの)して摂取して欲しいところではありますが、塩あめなど塩気のあるものを少し舐めてもらいながら摂取してもらっても良いです。

ただし、意識が混濁している状態などでは

 

誤嚥

 

を起こしてしまうので、意識がしっかりしていることを確認し、少し体を起こした状態で摂取してもらうようにしてください。

また、一気に飲むのではなく

 

少しずつ摂取してもらう

 

ことを行ってください。

一気に飲むと水分が体に吸収されないまま尿として出て行ってしまうので注意が必要です。

 

これまで述べた熱中症の応急処置の流れを、環境省の『熱中症環境保健マニュアル2018』も含めて参考にしてみてください。

<引用資料:環境省『熱中症環境保健マニュアル2018』

 

まとめ


 

今回はシリーズ『熱中症』の第1回目として『熱中症のメカニズムと応急処置の手順・方法』についてお伝えしました。

これからの季節は熱中症の危険性が非常に高くなります。

熱中症は最初の対応さえ間違わなければ、ほとんどの場合は回復できる症状でもあります。

自分や自分の周りの人が熱中症の疑いがある場合に、今回お伝えしたことが少しでもお役に立つことができればと思います。

 

 

皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。

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