義足のメンテナンスと課題を考える

こんにちは。作業療法士の川本健太郎です。

私のブログのタイトルにもなっていますが、私は16歳の時に右足に骨肉腫というがんを患い、右足を切断してから、義足での生活を続けています。

以来25年以上、義足とともに人生を歩んでいます。

当然、ある一定の年数が経つと義足のパーツもあちこちにガタが来るので、メンテナンスが必要になります。

今回は、義足のパーツのうちの一つである膝継手(ひざつぎて)のメンテナンスについてのお話と、膝継手の課題についてお伝えできればと思います。

 

膝継手(ひざつぎて)とは


 

膝継手は、この写真での『膝継手部分』までのことを言います。

膝継手は、歩くときの膝の曲げ伸ばしの機能を持っていて、その人の身体の状態(身長・体重など)や生活スタイル(仕事、1日の活動量など)に応じて、さまざまな種類のものがあり、海外のメーカーや日本のメーカーのものを合わせると約120種類以上もあります(参考:厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 『補装具の適切な支給実現のための 制度・仕組みの提案に関する研究 平成26年度 総括・分担研究報告書』より)

膝継手(ひざつぎて)の性能は年々進化していて、重量はより軽く、膝の動きはより自然な歩き方に近いものになってきています。

私が使用しているオットーボック社(ottobock.)の膝継手『C-Leg4(3C98-3)』は1997年に初代の『C-Leg』が発売されてから4代目のC-Legになります。

見た目もそうですが、正式名である『3C98-3』からは、『ガンダム(RX78-2)』とか『ターミネーター』とかを連想する人もいるのではないでしょうか。

膝の動きをコンピューター制御でコントロールできるので、より自然な歩き方、身体の負担を少なくした歩き、より安全に坂道の上り下りや階段を降りる、といった動作が可能となります。

 

膝継手のメンテナンス


 

義足での生活において、膝継手の定期的なメンテナンスは欠かせません。

特に、歩く時には全体重を膝継手にあずけることがあるので、膝継手の調子が悪いと身体を痛めてしまうことや、転倒につながってしまうこともあり、最悪の場合は

 

転倒→骨折

 

ということにもなってしまうので、膝継手の少しの変化にとても神経を使います。

メーカーが推奨する定期点検以外でも、使っている時に違和感を感じたり、いつもは聞かれない音が膝継手から聞こえたり、歩き方が変わってきたりした時には、早めに義肢装具士さんに相談して対応してもらうようにしています。

今回は、メーカーが推奨する定期点検の説明をします。

 

<ソケット部分から膝継手を分離する>

 

<分離した膝継手(左)をメンテナンス用の膝継手(右)と交換する>

 

<メンテナンス用の膝継手と足首パーツを接続する>

 

メンテナンスに際しては、

 

①ソケット部分から膝継手を分離する

 

②分離した自分の膝継手をメンテナンス用の膝継手と交換する

 

③メンテナンス用の膝継手とソケット・足首パーツを接続する

 

④メーカーでのチェック(2週間〜3週間程度)

 

⑤メーカー側でチェックして、動作や性能などに問題がなければ、チェック終了とともに再び自分の膝継手として使用する

 

といった工程でメンテナンスが行われます。

メンテナンスの際に、メーカーから提供される『メンテナンス用の膝継手』に関しては、予め私の膝のデータを移行しているので、自分の膝継手と変わりなく使うことができるように設定されています。

『C-Leg4』には、1997年に発売された『C-Leg』からのビックデータが活用されているので、過去の使用実績と世界中のデータを合わせて、今現在で最も私に合った状態になるよう設定することが可能となっています。

 

膝継手の課題


 

ここまでの話をすると、

 

「コンピューター制御って、すごいですね!」

 

「最新のものが使えていいですね!」

 

など、良いところが目立っているように感じられる方も多いのではないでしょうか。

実際に、『C-Leg4』を使っていると便利なことが多いと思います。

でも、以前のブログでも書きましたが、実際には義足と車いすと松葉杖を併用しながら生活することがほとんどであり、義足だけを日常的に使っているわけではありません。

 

 あわせて読みたい

<義足と車いすと松葉杖を使い分ける>

義足と車いすと松葉杖、それぞれを日常的に必要としている中での使い方についての話です。

 

また、

 

最新型だから

 

技術や知識の蓄積の多い海外メーカーだから

 

といって

 

必ず良いとは言い切れません

なぜでしょうか。

 

『C-Leg4』のような膝継手を扱える義肢製作所はそれほど多くない


『C-Leg4』のような膝継手を扱える義肢装具士さん(義肢製作所)は限られていて、もし、外出中とかに不具合が生じた場合に、すぐにメンテナンスや修理ができるところで対応することができない可能性があるからです。

『C-Leg4』に関しても、『C-Legライセンスセミナー』というメーカーの研修を受け、取り扱いができる技術を持った義肢製作所のみが取り扱いができる仕組みになっています。<リンク:C-Leg取扱い義肢製作所施設

取り扱いができる義肢製作所であっても、年間に取り扱う膝継手の本数や内容によっては、『C-Leg4』のような膝継手を扱うことそのものが少ないこともめずらしくありません。

また、膝継手の調子が悪いからといって、いきなり義肢製作所に行って

 

「すいません、膝のパーツを貸してください」

 

と言っても、予備のパーツやメンテナンス用のパーツを置いていないのが実情ですし、いきなり来た人に高額な膝継手を貸すはずもありません。

 

今使っている膝継手以外のものをすぐに使いこなすことは難しい


例えば、今現在使っている膝継手があるとして、他のメーカーで最新モデルが出たとします。

実際に試験的につけてみて

 

「これなら良さそう」

 

と思って他のメーカーの最新モデルに切り替えたとします。

でも、実際の生活場面では、多くの応用動作を求められるので、以前使っていた膝継手で慣れた身体を新しいモデルの膝継手に合わせるのには時間がかかります。

すぐに慣れればいいのですが、実際は慣れるまでに時間がかかり、その結果

 

「やっぱり、前のモデルの方がいいや」

 

となった場合、新しい膝継手は無駄になってしまいます。

これが、自己負担で新しい膝継手を作るならば、自分のお金がなくなるだけですが、『補装具給付制度』という国の制度を使って膝継手を作った場合、その費用は税金から出されているので、いささか問題になります。

そういった問題にならないように、各都道府県・政令指定都市では『身体障害者更生相談所』などで『補装具給付』のための『判定』を更生相談所の医師・専門職・相談員が行うのですが、その際には必ず

 

新しいモデルに変える必要性がどれだけあるのか

 

を慎重に検討されることになります。

 

最新モデルが良いとは限らないのはパソコン・スマホなどで考えてみる


最新モデルの膝継手が必ずしも良いとは言えないということをイメージする場合、皆さんが使っているパソコンやスマホなどで考えてみてください。

多くの方々がパソコンを使う時代ですが、WindowsにしてもMacにしても、最新型が出たからといって、すぐに買い替えたり、OSをアップグレードしたりするでしょうか。

メーカー(ここではWindowsやMac)はたびたびOSのアップグレードの告知をして、アップグレードまでの移行期間を設けて、その期間を過ぎればメーカー保証(特にウイルス対策など)がなくなると言っています。

でも、多くの方は

 

「使い慣れたものを使い続けたい」

 

「新しいOSは動作が不安定だから、しばらく様子をみてから考えたい」

 

「最新モデルばかりを追っているとお金がもったいない」

 

などの理由で、なかなか最新モデルにしないのではないでしょうか。

むろん、最新モデルへの強い関心と使いこなせるだけの能力があれば、どんどん新しいものに変える人もいるとは思いますが、多くの人は

 

必要最低限のアップグレードはするかもしれないけれど、『最新モデル』に必ずするわけではない

 

ように思います。

やはり、今まで使い続けた実績とその経験が生かせるかどうかの目処が立たないと、なかなか新しいモデルに変えようとは思わないのは、どんなことでも言えるのではないでしょうか。

 

まとめ


 

今回は、義足のパーツのうちの一つである膝継手(ひざつぎて)のメンテナンスについてのお話と、膝継手の課題についてお話ししました。

膝継手は年々進歩していますが、膝継手も機械である以上、定期的なメンテナンスが必要になります。

メンテナンスでは、今までの自分のデータだけではなく、過去のデータも反映されるので、今現在で最も自分に合った状態になるよう設定することが可能となります。

その一方で、

 

最新型だから

 

技術や知識の蓄積の多い海外メーカーだから

 

必ず良いとは言い切れないこともお伝えしました。

今回の記事を通じて、私を一つに例にしていただき、少しでも障害のある人への理解につなげていただけたらと思います。

 

最後までブログを読んでくださり、ありがとうございます!

 

Be the first to reply

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です