こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
熱中症への対応を本格的に行わなければならない季節になり、このブログでもシリーズで『熱中症』について扱っています。
『熱中症』シリーズ
第1回目は『熱中症のメカニズムと応急処置の手順・方法』
第2回目は『熱中症かなと思った時の水分補給方法』
第3回目は『熱中症を防ぐために普段から心がけたい水分補給方法』
をお伝えしました。
今回は、『熱中症になりやすい人・なりにくい人の特徴』というタイトルで、どんな人が熱中症になりやすいのか、どうすれば熱中症になりにくい人になれるのかについてお伝えします。
目次
熱中症になりやすい人とは?
熱中症は、なりやすい人となりにくい人とがいます。
熱中症になりやすい人に共通するのは
①暑さや渇きを感じる脳のセンサーの機能
②汗をかく機能(発汗機能)
③体調・体力の状態
④血液の状態
⑤体の中の水分量
といった機能の衰えもしくは著しい低下です。
①〜⑤は歳を取ることで低下するため
65歳以上の高齢者は①〜⑤全ての機能が低下している
と言え、熱中症で死亡する人の8割以上が高齢者という原因にもなっているのです。
高齢者だけではなく、若い人や働き盛りの人でも熱中症になりやすくなるのは、①〜⑤の機能がなんらかの原因で急激に低下した場合や、もともと持病がある場合や、お酒をたくさん飲んで二日酔いになった場合や、下痢などの症状を起こした場合などが挙げられます。
以下に、熱中症になりやすい人・熱中症になりにくい人を表にまとめてみましたので、皆さんいくつ当てはまるかチェック✅してみてください。
熱中症になりやすい人
□暑さに体が慣れていない and/or 汗をかきにくい
暑さに体が慣れていないと、暑い環境で少し動いただけでもかなりの疲れが生じてしまい、疲れから食欲低下や水分摂取量の減少を引き起こします。
また、暑さに慣れていないと汗をかきにくくもなります。
汗をかきにくい人は、汗をかいて体温調節をする機能が低い傾向にあるため、体の中から熱を逃すことができにくくなり、体温がどんどん上昇してしまいます。
□寝不足や疲れなどで体調が悪い
十分な睡眠が取れない時が続いたり、なかなか疲れが抜けない時が続くと、体調が悪くなり、環境の変化に体がついていかなくなります。
体調が悪くなると汗をかく機能(発汗機能)が低下し、血液の流れも悪くなるので、体の中から熱を逃すことができなくなります。
□二日酔い(深酒)や下痢をしている
アルコールには強い利尿作用があるため、体の中に必要としている水分までもを尿として体の外に出してしまいます。
その結果、翌日まで体の中の水分量が少ないままの状態が続いてしまいます。
その状態で高温・多湿の環境などに長時間いると、体の中は極度の脱水になってしまい、体温を下げるのに必要な汗をかく機能(発汗機能)が低下し、血液の流れも悪くなります。
下痢も、必要以上に体の中の水分が外に出て行ってしまうため、重度の脱水状態になってしまいます。
また、下痢→熱中症だけではなく、熱中症→下痢 という症状経過をたどることも珍しくないので、下痢をしている時には、すでに紹介している経口補水液(ORS)を摂ることをお勧めします。
□持病がある
循環機能を低下させる、心疾患、腎疾患、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの持病がある人は、もともと血液の流れが悪いだけではなく、飲んでいる薬などで他の臓器に負担をかけていることで、体の中の熱を外に出しにくくなっていることがあるので注意が必要です。
□朝食をとらない習慣がある
朝起きた直後は脱水状態になっていることが多いため、朝食を摂らない人は朝食に含まれる水分を摂っていない状態だと言えます。
朝食をしっかり摂らないと昼間に脱水になりやすくなるため、朝食を摂ることをお勧めします。
朝しっかり食べる習慣がない人は、せめて野菜ジュースや牛乳など、その日1日のエネルギーになり得るものは最低限摂取して欲しいところです。
□筋肉量が多い
筋肉は体の中で蓄える水の量にも関係する器官でもありますが、その一方で筋肉は熱を生み出す器官でもあるため、動いた時に発生する熱が大きく、体温上昇に繋がりやすくなります。
筋肉量が多いと、蓄えている水の量よりも熱として出ていく(気化熱)量の方が多くなります。
□筋肉量が少なすぎる
適度な筋肉量は、吸熱と放熱のバランスが取りやすいのですが、筋肉量が少なすぎると体の中に蓄えらえる水の量がそもそも少ないので、少しの熱でも体の中の水分が外に出ていってしまいます。
□運動する習慣がない
日頃から運動をすることに慣れていない人が運動をすると、体の中で急激に発生した熱を逃す機能がなかなか働いてくれないため、熱が体の中にこもりやすくなってしまいます。
□肥満
皮下脂肪が厚いため、体の中に熱がこもりやすくなってしまいます。
また、肥満の人は汗を大量にかくことも多いため、暑いところに出ると体の中の水分が急激に外に出ていってしまい、脱水症状を起こすことがあります。
□子供・乳児
子供・乳児は汗を出す腺(汗腺)が未成熟なため、体の中にたまった熱を汗として十分に外に出すことが難しく、そのため、成人よりも体温が上昇しやすい傾向にあります。
また、成人よりも身長の低い子供は、地面からの熱(照り返し)の影響も受けやすいことも、体温上昇につながっています。
乳児は自分で喉の渇きの訴えをすることや、自力で水分摂取をすることができないため、特に注意が必要です。
いくつ当てはまりましたか?
当てはまる数が多ければ熱中症になりやすいと言えるので、できるだけチェック内容が減るような取り組みをしましょう。
熱中症になりやすい人のチェックリストはPDFでダウンロードできるようにしていますので、ご自由にお使いください。
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同じ暑い環境に長くいても、同じ環境で同じ運動をしても、同じ仕事をこなしても、熱中症になりやすい人となりにくい人がいます。
その理由は、『環境』『心身の状態』『行動』が異なるからです。
上図『熱中症を引き起こす条件』にもあるように、同じ環境でも日差しの強い場所、風通しの悪い場所、照り返しの強い場所などで体の温められ方に差が出ます。
心身の状態では、元気な人と持病のある人、栄養状態が良い人と低栄養状態の人、体調が良い人と下痢やウイルス性の発熱などがある人とでは、暑さに対する抵抗力も異なってきます。
行動では、肉体労働の量や強さの違い、仕事や暑さへの慣れ、休憩の取り方などでも熱中症の発生に差が出ます。
ところで、熱中症になりやすい人はわかりましたが、熱中症になりにくい人とはどんな人なのでしょうか。
熱中症になりにくい人
□普段から運動をして汗をかいている人
普段から運動をして汗をかいている人は、汗をかく時に体の中から水分を出す汗腺(かんせん)という器官が良い状態で保たれています。
そのため、普段から運動をして汗をかいている人は、比較的サラサラの汗をかき、サラサラの汗は気化しやすいため、体の中の熱を効率よく外に出して体温調整をしやすくしてくれます。
しかし、普段あまり運動しない人や冷房の効いた空間で長時間過ごす人は、汗腺の機能が低下しているので、急に汗をかく時にドロドロの汗をかいてしまいます。
ドロドロの汗の特徴としては
汗が大粒で濃い(ミネラルがいっしょに排出されるため)
汗がベタベタしている
汗のにおいが強い
汗が気化しにくい
汗をかくと不快に感じる
といったことが挙げられます。
汗が気化しにくいため、汗をかいても体の中の熱がなかなか外に出て行かずに体温調整しにくく、また、体に必要なミネラルも排出してしまうため、夏バテや熱中症も起こしやすくなります。
□体が暑さに慣れた人
暑い日が続くと、体がしだいに暑さに慣れて、暑さに強くなります。
これを
暑熱順化(しょねつじゅんか)
と言います。
この慣れは、汗をかく量や皮膚の血流量を増やしたり、汗をかき始める体の中の基準値を下げたり(発汗開始閾値の低下)、汗に含まれる塩分濃度を下げたり、血液量を増やしたり、心拍数を少なくして心臓への負担を減らしたりと
暑さに慣れるために必要な体づくり
の基本となります。
暑熱順化には数日〜2週間程度かかりますが、普段の運動でも暑熱順化を獲得することは可能です。
やや暑い環境で、ややきついと感じる強度で、毎日30分程度の運動(ウォーキングなど)
を行って、意識的に汗をかく機会を増やすと暑熱順化が早まります。
ただし、持病のある人は必ずかかりつけ医に相談してください。
□生活のリズムが規則正しい人
規則正しい生活は、熱中症予防の大原則です。
休みの日であるかないかに関わらず
毎朝起きる時間を決める
毎晩寝る時間を決める(夜更かしをしない)
お風呂に入る時間を決める
3食きちんと食事を摂る(2食の場合は1食での食事量を増やしすぎない)
体を動かす時間を作る
暑熱順化しやすい環境を作る
といった、体に良いリズムを作ることが大切です。
□普段からこまめに水分を摂る習慣のある人
普段からこまめに水分を摂るために
1時間にコップ1杯程度(100〜200mL)
もしくは
目が覚めたとき(起床時)
外出前
家に帰ってきたとき(帰宅時)
お風呂の前と後
寝る前
といった感じでできるだけ習慣化して飲むことを、前回のブログではお勧めしました。
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こまめに水分を摂る習慣をつける方法として
ウォーターローディング
もお勧めできます。
これは、下の図のように朝起きてから寝るまでの間を循環(ローディング)するように水分を摂ることです。
1回の水分量は100mL〜200mLを目安にします。
ウォーターローディングをすることで、体の細胞内の水のタンクを常に満たしておくことができ、大量に汗をかいても熱中症になるまでの時間を先延ばしにできる可能性があると言われています。
□栄養の偏りや栄養の不足がない人
熱中症の原因ともなる
体力の低下
は、栄養の偏りや栄養の不足がある人によく見られることです。
体力の低下を防ぐためには、栄養のバランスのとれた食事をすることが第一です。
基本は1日3食摂って欲しいところですが(特に成長過程の子供)、2食であっても1食にたくさんの量の食事をとらずに栄養のバランスのとれた内容であれば問題ないと思います。
そして
主食
主菜(メインディッシュ)
副菜
をきちんと食べることも大切です。
基本的には、ご飯(主食)、肉・魚(主菜)、野菜(副菜)を毎食食べることで自然と栄養のバランスは整います。
また、体力の元になる質の良い筋肉をつけるために食事から摂取して欲しいのが
タンパク質
ビタミンB6
といった物質で、これは鶏肉(ササミ、ムネ肉)、牛レバー、マグロ(赤身)、カツオ、鮭、サバ、緑黄色野菜、カリフラワー、ニンニク、バナナなどに多く含まれています。
□持病がない人
持病がなく、元気であることは熱中症になりにくいことにも繋がります。
ただ、65歳以上の高齢者では持病がない人はほとんどいないことや、生まれつきあるいは成長過程で病気を発症して持病となる人もいるので
持病を悪化させない適切な管理
を行うことが大切です。
また、成人であれば普段からの生活において
生活習慣病を予防する
ということを大前提に
規則正しい生活を心がける(特に食事と睡眠)
適度な運動をする
お酒の飲み過ぎ(暴飲)をしない
栄養バランスのとれた食事を摂る
ストレスをためない
タバコを吸わない
などを心がける必要があります。
熱中症になりにくい人のチェックリストはPDFでダウンロードできるようにしていますので、ご自由にお使いください。
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まとめ
今回はシリーズ『熱中症』の第4回目として『熱中症になりやすい人・なりにくい人の特徴』というタイトルで、どんな人が熱中症になりやすいのか、どうすれば熱中症になりにくい人になれるのかについてお伝えしました。
また、今回掲載した『熱中症になりやすい人』『熱中症になりにくい人』のチェックリストを定期的にチェックして、ご自身の熱中症対策の状況を定期的に確認していただけたらと思います。
熱中症は夏場に多く見られますが、熱中症の予防のためには
普段からの体づくり
がとても大切になってきます。
自分や自分の周りの人の熱中症の予防のために、今回お伝えしたことが少しでもお役に立つことができればと思います。
皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。
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