こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
新型コロナウイルス、インフルエンザ、一般的な風邪などの感染症をはじめ、私たちは一生のうちに何度か病気にかかりますよね。
症状の軽いものから、症状の重いもの、癌などの悪性新生物・上皮内新生物といった命に関わるものまで、一言で病気と言ってもその発症条件や症状はたくさんあります。
こうした病気に対して、人間の体には
免疫力
が備わっており、免疫力が高ければ、それだけ病気にかかりにくい体になりますし、逆に免疫力が低ければ、病気にかかりやすくなってしまいます。
新シリーズ『免疫力』、第3回目は免疫力の主役とも言える『免疫の仕組み(獲得免疫編)』についてお伝えするとともに
自然免疫と獲得免疫がどのように連携して病原体やがん細胞に対抗しているのか
をお伝えします。
目次
獲得免疫|後天的に獲得される免疫
前回のブログでは、生まれつき人の体に備わっている
自然免疫
についてお伝えしました。
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私たちが生まれつき備えている自然免疫は
病原体の侵入に対していち早く反応し
敵とみなせば無条件に攻撃をしかける
のが特徴であり、体の中を常にパトロールしてトラブルから体を守ることから
体の中の警察
とも言われることがあります。
一方、特定の病原体に感染することで後天的に獲得される免疫のことを
獲得免疫(適応免疫)
と言い、一度出会った病原体を記憶して再侵入に備え、いざ病原体が侵入すると
病原体に対して総攻撃を加える
のが特徴です。
獲得免疫による攻撃は非常に強く、また、攻撃に際しての指揮命令系統がはっきりと確立されていることから
体の中の軍隊
とも言われることがあります。
この獲得免疫を担っているのは主に
T細胞
B細胞
からなります。
T細胞は獲得免疫の重要な細胞であるリンパ球の70〜80%を占めており、胸腺(Thymus)で成熟されることから、Thymusの頭文字をとってT細胞と呼ばれています。
B細胞はリンパ球の25〜40%を占めており、骨髄(Bone marrow)で産生され骨髄内で分化し成熟することから、Bone marrowの頭文字をとってB細胞と呼ばれています。
T細胞はさらに
ヘルパーT細胞
細胞傷害性T細胞
制御性T細胞
といった免疫細胞に分類することができます。
それぞれの免疫細胞たちの働きをみてみましょう。
ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は自然免疫である
樹状細胞
マクロファージ
から提示された
抗原
をもとに、B細胞に働きかけて病原体を無力化するタンパク質の一種である
抗体
の産生を促します。
また、抗原を提示されたヘルパーT細胞は
サイトカイン
という生理活性物質を産生します。
このサイトカインは
細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)を活性化
B細胞を活性化
好中球を活性化
する役割があります。
ヘルパーT細胞は、その役割から獲得免疫における
司令官
のような働きをすると言ってもいいでしょう。
細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)
細胞傷害性T細胞は
キラーT細胞
としても知られています。
抗原の提示を受けたヘルパーT細胞から産出されるサイトカインによって、細胞傷害性T細胞は活性化し、病原体に感染した細胞を
細胞ごと破壊する
ことでも知られています。
T細胞の中では最も攻撃力が高いとされ、獲得免疫における
実戦部隊
と言ってもいいでしょう。
制御性T細胞
制御性T細胞は
指令を出す
という面ではヘルパーT細胞と似ていますが、ヘルパーT細胞が攻撃指令を出す細胞だとすると、制御性T細胞は
抑制指令
を出し、免疫細胞の過剰な働きを抑える役割を担っています。
特に、後述するB細胞による抗体の産生が過剰になることで引き起こされる
アレルギー反応
などの免疫反応を抑えるために、非常に重要な役割を持っています。
B細胞
B細胞は
抗体を作り出す
ことで知られています。
ヘルパーT細胞から産生されたサイトカインによってB細胞は活性化し、その結果、パワーアップしたB細胞は
形質細胞
に転化して
大量の抗体を産生
して病原体を攻撃することが大きな特徴です。
この抗体こそ、病原体に対する
究極の兵器
であるとも言われており、病原体が体内に侵入すると、その病原体特有の抗原に特異的に結合して
無力化する作用がある
ことから、病原体以外の細胞などを傷つけることなく、かつ、効果的に病原体を押さえ込むことができる非常に優れた性質を持っているとされています。
<参考:中外製薬 抗体とは?>
活性化したB細胞の一部は、抗原を記憶して
メモリーB細胞
に転化し、記憶した抗原を持つ病原体が体に侵入した際に素早く反応できるようにしていて、この特徴を利用したのが
予防接種
なのです。
通常のB細胞の寿命は数日から数ヶ月程度とされていますが、メモリーB細胞の寿命は
数年〜数十年
とされており、次の感染に備えて人の体の中で長い年月活躍する極めて貴重な細胞であると言えます。
体は自然免疫と獲得免疫の連携によって守られる
体に細菌やウイルスなどの病原体が侵入した場合や、がん細胞などが増殖し、免疫による攻撃が必要になった場合、ひとの体の中では主に2つの系統の働きで病原体やがん細胞などを排除しようとします。
まず、一次防衛機構として機能するのが
好中球
マクロファージ
樹状細胞
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
といった
自然免疫
が働きます。
しかし、ウイルスなどのように小さい病原体や、自然免疫の網をすり抜けた病原体に対しては、二次防衛機構として
T細胞
B細胞
といった
獲得免疫(適応免疫)
が働きます(下図参照)。
自然免疫と獲得免疫とは互いに連携を取りながら、病原体に対してそれぞれ攻撃を加えるとともに、B細胞の一部がメモリーB細胞となって一度出会った病原体を記憶して、再度の侵入にいつでも応答できるようにしています。
こうして私たちの体は、2段階の免疫システムによって守られているのです。
しかし、ナチュラルキラー細胞などの自然免疫は
病気や精神状態に左右されやすい
という特徴があります。
一方で、T細胞やB細胞といった獲得免疫は
病気や精神状態に左右されにくい
という特徴があります。
そのため、免疫力を高めるということは
自然免疫の働きを良くする
ことが大前提になってきます。
特に、免疫力の要(かなめ)と言われている
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性化
がとても重要になるため
生活習慣
食事内容
ストレスへの対処方法
運動習慣
などを改善することが、免疫力を高めるとても大切な要素になってきます。
まとめ
今回はシリーズ『免疫力』の第3回目として『免疫の仕組み(獲得免疫編』についてお伝えするとともに
自然免疫と獲得免疫がどのように連携して病原体やがん細胞に対抗しているのか
について、図でまとめた内容をお伝えしました。
新型コロナウイルス、インフルエンザ、一般的な風邪などの感染症をはじめ、私たちは一生のうちに何度か病気にかかります。
できれば感染症や病気などにはかかりたくないものですし、普段からの心がけや取り組みによって、病気を未然に防ぎたいものです。
そのためにも、私たち一人ひとりの体に備わっている
免疫力
についての理解を深めるとともに、免疫力をしっかりと高めていきたいですね。
コロナ禍がひと段落をしても、感染症や病気から身をも守ることがとても大切になってくるということを私たち一人ひとりがしっかりと認識し、このシリーズを通して免疫力を少しでも高めることができるようになっていただければ、とても嬉しいです。
(ㅅ´ ˘ `)♡
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