こんにちは。広島の作業療法士の川本健太郎です。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
生活しているといつどこで何が起きるかわかりません。
シリーズ『救命救急』では、いざという時のために、日頃から必要な知識や技術を学んでおくことは大切であり
あなたのその行動で助かる命がたくさんある
ということをお伝えしています。
今回は救命救急シリーズの第5回目として『もしも出血してしまったら? いざという時の出血への対応方法』というタイトルで、出血した時の対応方法についてお伝えします。
目次
血液の特徴
血液は、心臓のポンプ作用によって全身の臓器へくまなく循環し、その間に毛細血管を介して
酸素
栄養素
といった体のエネルギー源になるものと
二酸化炭素
老廃物
などとの物質交換を行うことで
生命維持の重要な役割
を担います。
人間の血液量は
全体重の約8%
を占め、例えば、体重60kgの人の場合は約5Lに相当します。
血液の成分についての細かな特徴はここではお伝えしませんが、ケガや病気によって血管が傷ついて、短時間のうちに全血液量の3分の1以上を失うと
生命維持の危険性が非常に高くなる
とされています。
出血の種類
出血は大きく分けて2種類に分類されます。
1.目に見える出血(外出血)
血液が目に見える出血を
外出血
と言います。
主なものとしては
外傷出血
鼻血
口の中の出血
胃や腸といった消化管の出血
などのことを言います。
わずかな出血であれば、止血の処置をすれば大きな問題になることはほとんどありませんが、体の外へ大量に血が出ると
貧血
になってしまいます。
外出血に対しては
直接圧迫止血
が止血に最も効果的です。
2.目に見えない出血(内出血)
外見から、どこで出血をしているのか特定できない、あるいは出血そのものに気づかない出血を
内出血
と言います。
主なものとしては
皮下出血
関節内出血
筋肉内出血
腹部打撲による腹腔内出血(主に、肝臓や脾臓など)
胸部打撲による胸腔内出血(主に、肺や心臓や大動脈など)
頭蓋内出血
などのことを言います。
内出血による出血で、血の塊(かたまり)である
血腫(けっしゅ)
が体の中にできるので、この血腫が周りの組織を圧迫して
組織の機能異常
血液循環の阻害
神経症状(異常な痛みやしびれなど)
などを引き起こします。
特に頭蓋内出血は、出血によって脳が圧迫されて障害を受けるため
突然意識を失ってしまう
体の一部分もしくは全体に麻痺が残る
高次脳機能障害という脳の機能が著しく障害される
生命を失う危険性が高い
といった特徴があるため出血のサインを見落とさないことがとても重要になります。
また、腹腔内出血や胸腔内出血では
大量の出血が一気に起こる
ことも珍しくなく
緊急手術など医師による止血治療が必要
になります。
内出血は目に見えず、症状として現れるまでに時間がかかることも珍しくないのですが、症状が出現すると一気に悪化するという特徴もあるので、少しでも異変を感じたら迷わずに
119番通報
をすることが救命の鍵となります。
出血による症状
急な出血によって体の中の血液が不足して、命の危険性が高まる状態のことを
出血性ショック
と言います。
人間の体は1000mL以内程度の出血であれば、体の中をめぐっている循環血流量が減っても、手や足の先などの末梢血管を収縮させることによって末梢血管抵抗を上昇させて
一時的に血圧を維持する
働きがあります。
しかし出血が続くと
心拍数が増加
呼吸が速くなる
血圧低下(収縮機血圧:一般的には『上』の血圧と言われる)
顔が真っ青になる
手足が一気に冷たくなる
会話が噛み合わなくなる(不安症状を急に訴え始めるなど)
冷や汗が出る
といった状態がどんどん進行します。
そして脳への血流量が低下するので
めまい
ボーッとする
吐き気をもよおす
など、意識が徐々に低下していき、その結果
生命維持ができなくなる
ようになります。
出血性ショックには
ショック指数
と呼ばれるものがあります。
これは出血で起きている状態を把握するために用いられる指数であり
出血の重症度判定
に役立ちます。
ショック指数の計算は
ショック指数=心拍数÷収縮期血圧
で求めることができ
正常:0.5未満
軽症:0.5以上1.0未満
中等症:1.0以上1.5未満
重症:1.5以上2.0未満
最重度:2.0以上
とされています。
指数が1.0で約1000mLの出血量が推定されます。
ここで注意したいのは、ショック指数で明らかに状態がおかしいと気づくまでに時間がかかり、状態がおかしいとわかってから一気に症状が進んでしまうところです。
そこで見逃してはいけないのが
眼瞼結膜(がんけんけつまく)
という状態です。
これは、目のまぶたの裏の粘膜が通常は赤い編み目のような毛細血管が見えるところが下の写真のように
白っぽくなること
で、重度の貧血の時に見られる症状です。
<出典:佐野内科ハートクリニック>
こうした症状が見られた場合には
119番通報
を迷わず行ってください。
止血の注意点
主に外出血の時ですが
できるだけ血液に直接触れない
ことが大切です。
これは、ある種の肝炎やHIV/エイズなど、ウイルスを含む血液や体液を介して人から人へ感染することがあるからです。
私も仕事柄、患者さんが口から急に
吐血(とけつ)
されることもあります。
この場合も、素手で触ることはせず、きちんと感染対策をして対応をします。
ただし、誤解しないで欲しいのですが
自分の血液に触れるのはまったく問題ない
ウイルスを含む他の人の血液が手に触れたからといってすぐに感染するわけではない
ことはしっかりと認識しておいてください。
感染のルートとしては
他の人の血液がついた刃物で自分の皮膚を切ってしまった
飛び散った血液が目などの粘膜にかかってしまった(血液がついた手で目を擦るなど)
救助者の皮膚に傷があってそこに血液がついてしまった
など、体の中に他の人の血液が侵入する理由がある場合に感染する危険性があると認識してください。
止血への対応を含む血液の取り扱いの際には
ゴム手袋やビニール袋を自分の手にかぶせる
できるだけ直接血液に触れない
ようにしてください。
他の人の血液が皮膚についた場合は慌てず血液を水道水で十分に洗い流してください。
止血方法
ここでは外出血についての止血方法をお伝えします。
外出血に対する止血方法は次の3つの方法があります。
1.直接圧迫止血法
止血の基本は
圧迫
です。
出血している部位を
厚みのあるガーゼ
きれいなハンカチやタオル
などで強く押さえます。
腕や足での出血の場合は
出血している部位を心臓より高い位置にする
ことも重要です。
止血するためには時間がかかるので
少なくとも3分以上は圧迫を続ける
ことが大切です。
いったん出血が止まったあとも、再出血を防ぐためにガーゼなどはそのまま出血している部位に当てておきます。
片手で圧迫をしていても血液がにじみ出てしまう場合は
圧迫が弱い
圧迫部位が出血部位からずれている
ことがあるので、両手で体重をかけて圧迫する力を強めることや、圧迫する範囲を広げて対応してください。
それでも出血が止まらない場合は太い血管が切れている可能性があるので
119番通報
をして救急隊が到着するまで
出血している部位をできるだけしっかり圧迫し続ける
ことを行ってください。
直接圧迫止血法については、動画で見ると大変わかりやすいので、下記の動画をぜひ参考にしてください。
<1分の動画で直接圧迫止血法の説明がされています>
2.間接的圧迫止血法
これは、動脈からの出血が激しく続いている時に、ガーゼや包帯を準備する間に行う方法です。
手や足の出血の場合
出血している部位より心臓側に近い部位の血管を手や指で圧迫して血流を遮断する
ことで出血を止めることを行います。
腕の出血であれば脇の下(腋窩動脈)
手や手首の出血であれば肘の内側(上腕動脈)
指の出血であれば指の付け根
足の出血であれば太腿の付け根(大腿動脈)
を手や指でしっかりと押さえて出血を少しでも少なくしてガーゼや包帯が届くまで待ちましょう。
3.止血帯法
手や足の出血で
直接圧迫止血法では止血が困難な場合
に行う方法です。
これは
止血帯(しけつたい)
という特殊な道具を用いて行う止血法であり、救急隊員や災害派遣部隊が使用することが多いので、あくまで参考程度に知っておいていただけたらと思います。
止血帯法について動画で解説してありますので、参考にしてみてください。
<約3分の動画で止血帯の使用方法を説明しています>
4.鼻出血への対応
いわゆる
鼻血
というものです。
鼻の入り口に近い部分を
キーゼルバッハ部位
と言い、この部分に
顔面打撲
鼻粘膜のひっかき
などの外力が加わったり
気圧の変化
鼻周囲の乾燥
といった刺激が加わることで
鼻出血
が引き起こされます。
対処方法は直接圧迫法が有効で、座ってうつむくように軽く下を向いて鼻をつまみ
5分以上強く圧迫する
ことを行います。
鼻血が出ているからといって丸めたティッシュなどを鼻にしっかりと詰めると
かえって静脈を傷つけてしまう
ので綿花(柔らかいワタ)を鼻に詰める、もしくはティッシュを使用する場合は出てきた血を吸い取る程度に外からティッシュを当てましょう。
鼻出血の止め方については下記に紹介する動画も参考にしてみてください(子供の鼻出血の対応方法の紹介ですが成人でも行うことは同じです)。
特に小さなお子さんがおられる方はぜひ参考にしてくださいね。
<2分半の動画で鼻出血の止め方を紹介しています>
それでも鼻出血が治らない、あるいは鼻出血を繰り返す場合は何らかの病気の疑いがあるので
医療機関の受診
をお勧めします。
まとめ
今回は『もしも出血してしまったら? いざという時の出血への対応方法』というタイトルで、出血への対応方法についてお伝えしました。
出血は目に見える出血もあれば目に見えない出血もあるので、少しの出血だけ、あるいは自覚症状がないからといって出血を軽く見るのは大変危険です。
すり傷程度であれば、水道水で傷口をきれいに洗い流してからカットバンなどの処置をすれば済みますが、明らかに出血が多い場合は速やかな対応が求められます。
出血の際の基本的な止血方法は
直接圧迫法
を用いることが基本ですが、それ以外の方法も知っておくことも大切です。
いざという時のために、日頃から必要な知識や技術を学んでおくことは大切ですし
あなたのその行動で助かる命がたくさんある
ということも覚えておいてください。
大切な命を守るためにも、今回お伝えしたことが少しでもお役に立つことができればと思います。
皆さんの貴重なご意見・ご感想、大変参考になりますので、お気軽にコメントなどいただけると嬉しいです。
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